似たような病変のACS症例を、連続で提出しました。
ACSのいろんな心電図パターンを、学んで頂くためです。
右冠動脈(RCA : Right Coronary Artery)
回旋枝(LCX : Left Circumflex artery )
結論を云うと、
【 ACSと、瞬時に判断できるのがベスト。責任病変が、RCA or LCXなのかは、二次的問題です。 】
【 各々の解剖学的支配領域のバリエーションを、理解しましょう 】
【 その上で、RCA/LCXのACSでの心電図変化の特徴を、ちょっと知っておく 】
自分の病変推定が正しかったかは、PCIが済んでから、ゆっくりと珈琲でも飲みながら考えましょう。
==RCAの解剖学的特徴=
* #1,2,3は、右房/右室の間(=房室間溝)を走っています。左室の下後壁を栄養するための、いわば導管です。
* よって、どこで閉塞しても心電図変化に変わりはない?
* 右室自由壁への虚血が、右室梗塞像を呈することがあります。
* 洞結節動脈の閉塞で、洞停止はあり得ます。
*但し、#1で閉塞した場合でも、右室梗塞も徐脈・洞停止が起きない事もあるのが、不思議なところです。
* 4PDは、心室中隔の下方を栄養します。(室間溝を走行)
* 4AVは、左房/左室の間(=房室間溝)の下部を栄養します。
==LCXの解剖学的特徴=
* 回旋枝の支配領域は、側壁(自由壁)が主体です。
* よって、側壁誘導( I, aVL, V5,6)でST上昇を示しやすい、ハズです、論理的には。
* でも、現実的には、分かりやすい心電図変化を示しにくいこともある。
* 回旋枝が大きいと、下後壁まで虚血が発生し、II, III, aVFでのST上昇あり得ます。
* 場合によっては、V5,6でST上昇し、V2,3でST低下と云うお隣さん同士でのミラーイメージも経験します。このヘンよく説明しにくいです。
* 刺激伝導系支配は少なく、AV block合併例は、ほとんどありません。
で、RCAとLCXの支配領域は、冠動脈の個体差で、結構重なるんです。
冠動脈の支配領域は、症例毎に、本当に異なります。
よって、心電図でのST-T変化も、症例毎に異なるんです。
取り敢えず、RCA / LCX のACSでの心電図所見・比較表です。
これを、覚えようとしないで下さいね。キッパリと鑑別出来ないんだなあ~と、感じて頂ければ結構です。
何度も、云ってますように、ACSと感じ取ることが大切なのであって、どっちの病変なのか、当てっこは、さほど価値ないんです。
では、次回で実症例一覧です。
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