80才代女性です。胸部不快発作を病棟で起こしました。
◯ V1-3のQS patternは、9カ月前の心電図と著変有りません。
◯ 広範囲のST上昇を示します。
→但し、V1は上昇していない。
→全誘導でのST上昇でもない。けれど、心外膜炎除外しきれない。
◯ 心房細動のままですね。
(ST上昇は)突然の胸痛とのセットですから、ACSは外せません。心外膜炎も否定しきれません。対抗馬に、タコツボ心筋症もあります。
これを、心電図のみで解決する必要は有りません。ACSだった場合、トロポニン-I、CPKの上昇を確認を待っていては、心筋虚血を拡大させます。
心エコーを、すぐに行いました。
( 心尖部よりの左室長軸断層図 )
( 心尖部よりの四腔断層図 )
心尖部中心に、心室瘤を形成していますね。心のう液無し。
急性心外膜炎は、否定されました。でもタコツボ心筋症は、まだ完全否定出来ません。
なお、X dayの六ヶ月前の心エコーでは、壁運動障害がありまえせんでした。
ACSかタコツボ心筋症を、心電図で論じるのは後にして、冠動脈造影となりました。
LAD #7の完全閉塞症例でした。ずいぶんと長いLADです。
PCIを施行しています。経過は良好でした。
これで、心電図が何を語っていたかが、よく分かりました。
* LADの中間部分(proximalではない)の閉塞なので、V1のST上昇がない。
* 長いLADは心尖部を回り込んでいて、II ,III ,aVFも僅かながらST上昇を呈した。
* aVLは、回旋枝が栄養しており、ST低下がやや生じたと思われる。
素直にXday発症時の心電図を読めば、ACSが(一番人気)なのですが、色々と考えさせられた症例でした。
第3病日の心電図は、ACSの素直な経時的変化です。
今回の教訓
【 胸痛を伴ったST上昇は、STEMIでないと分かるまで、STEMI診断を捨てない 】
【 胸痛の心エコーは、聴診器と同じで必ず施行しましょう。 】