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Cardio2012のECGブログ-2019改

=上級医がやっている危ない心電図の見分け方= ECGにまつわる基本的な諸問題:総合診療部研修医と、ECG苦手医師のためのサイトです。

ECG-コラム 096:高カリウム血症で,なぜテント状T波が発生するのか:その2-静止膜電位

カリウム血症の心電図変化は、

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◎高カリウム血症で、静止膜電位が上昇する。

Naイオンの細胞内流入が遅くなり、QRS幅が広くなる。

◎一方、再分極を起こすKチャネルは開きやすくなり急速にKイオンが細胞外に流出する。T波が増高し、狭くて先鋭化する。

◎心房筋は、最初に動けなくなり、P波は消失する。(でも、心房内伝導は残っている。( sino-ventricular conduction / rhythm )

◎最後には、サインカーブ化して、心停止となる。

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 これが、高カリウム血症の心電図変化の普通の説明です。

 細胞膜電位の図になると、以下の様になりますね。

 (この図を、理解する旅が、今から始まります)

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 どうでしょう?ますます訳分からなくなった方もいると思います。

 まず、理解しておくべき、心筋細胞の電気生理学的知識です。

 テント状T波を理解するためには、お話しはここから始まります。

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  静止膜電位です。

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Resting potential : 静止膜電位  -90mV

 まずは、静止膜電位のお話しです。

 心筋が電気的・物理的に活動していない時。T波終了後からP波開始までの細胞膜の電位状態です。(刺激伝導系の先行興奮とか、突っ込まないで)

 細胞外液は、海です。基本的に、塩水です。

 細胞内液は、カリウムの海です。生体内で、一番多い電解質カリウムです。細胞内に沢山あります。

 細胞膜が、その境界を担っています。

 そして、僅かに細胞内の電位がマイナスとなっています。

 静止膜電位は、正常状態では、だいたい-90mVです。

(細胞外を0mVとして、細胞内の相対的マイナス度です。)

 

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 この電位差が、いざと云う時の心筋細胞の電気的興奮(続いての物理的収縮)を起こします。( Heart is beating )

 細胞膜は、静止膜電位が安定するように、電解質の出入りを制御する孔を沢山持っています。

 イオンチャネルと、イオンポンプです。

 イオンチャネルは、細胞膜内外の電解質の濃度差で出入りを決めます。エネルギーを必要としません。(その流量は、微妙に調節されます)

 イオンポンプは、エネルギーを使って荷電された電解質を、細胞内外で交換します。Na+,K+,Ca+,H+が主役です。

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◯ 体液(細胞外)は、ナトリウム(Na+) が主役

◯ 細胞内は、カリウム(K+) が主役

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 これをまず、理解して下さい。

 この安定期(拡張期/4相)は、心筋細胞の静止膜電位は-90mVと、マイナスに固定されています。

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 なお、イオンチャネルが開くとミリ秒単位でイオンの流入が発生します。超高速です!

 イオンポンプは、エネルギーを使って回され、ちょっと遅い流れです。

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 イオンチャネルもイオンポンプも、種類が沢山あります。それらが、複雑に作用しあって、細胞膜レベルの電気的興奮を起こしています。

 でも、できるだけ端折って、シンプルに解説して行きましょう。

 なぜ、高カリウム血症でテント状T波となるのか?

 異常を知るために、まず正常な細胞膜レベルの電気的変化を、次回お話しします。

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