高カリウム血症の心電図変化は、
****************************
◎高カリウム血症で、静止膜電位が上昇する。
◎Naイオンの細胞内流入が遅くなり、QRS幅が広くなる。
◎一方、再分極を起こすKチャネルは開きやすくなり、急速にKイオンが細胞外に流出する。T波が増高し、狭くて先鋭化する。
◎心房筋は、最初に動けなくなり、P波は消失する。(でも、心房内伝導は残っている。( sino-ventricular conduction / rhythm )
◎最後には、サインカーブ化して、心停止となる。
****************************
これが、高カリウム血症の心電図変化の普通の説明です。
細胞膜電位の図になると、以下の様になりますね。
(この図を、理解する旅が、今から始まります)
クリックすると、ECGが拡大します。
.
.
.
どうでしょう?ますます訳分からなくなった方もいると思います。
まず、理解しておくべき、心筋細胞の電気生理学的知識です。
テント状T波を理解するためには、お話しはここから始まります。
.
静止膜電位です。
.
.
.
クリックすると、ECGが拡大します。
.
.
.
【 Resting potential : 静止膜電位 】 -90mV
まずは、静止膜電位のお話しです。
心筋が電気的・物理的に活動していない時。T波終了後からP波開始までの細胞膜の電位状態です。(刺激伝導系の先行興奮とか、突っ込まないで)
細胞外液は、海です。基本的に、塩水です。
細胞内液は、カリウムの海です。生体内で、一番多い電解質はカリウムです。細胞内に沢山あります。
細胞膜が、その境界を担っています。
そして、僅かに細胞内の電位がマイナスとなっています。
静止膜電位は、正常状態では、だいたい-90mVです。
(細胞外を0mVとして、細胞内の相対的マイナス度です。)
.
.
クリックすると、ECGが拡大します。
.
.
.
この電位差が、いざと云う時の心筋細胞の電気的興奮(続いての物理的収縮)を起こします。( Heart is beating )
細胞膜は、静止膜電位が安定するように、電解質の出入りを制御する孔を沢山持っています。
イオンチャネルと、イオンポンプです。
イオンチャネルは、細胞膜内外の電解質の濃度差で出入りを決めます。エネルギーを必要としません。(その流量は、微妙に調節されます)
イオンポンプは、エネルギーを使って荷電された電解質を、細胞内外で交換します。Na+,K+,Ca+,H+が主役です。
.
.
.
クリックすると、ECGが拡大します。
.
.
.
◯ 体液(細胞外)は、ナトリウム(Na+) が主役
◯ 細胞内は、カリウム(K+) が主役
.
これをまず、理解して下さい。
この安定期(拡張期/4相)は、心筋細胞の静止膜電位は-90mVと、マイナスに固定されています。
.
なお、イオンチャネルが開くとミリ秒単位でイオンの流入が発生します。超高速です!
イオンポンプは、エネルギーを使って回され、ちょっと遅い流れです。
.
.
.
クリックすると、ECGが拡大します。
.
.
.
イオンチャネルもイオンポンプも、種類が沢山あります。それらが、複雑に作用しあって、細胞膜レベルの電気的興奮を起こしています。
でも、できるだけ端折って、シンプルに解説して行きましょう。
なぜ、高カリウム血症でテント状T波となるのか?
異常を知るために、まず正常な細胞膜レベルの電気的変化を、次回お話しします。
.
.
.
.
.
.