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Cardio2012のECGブログ-2019改

=上級医がやっている危ない心電図の見分け方= ECGにまつわる基本的な諸問題:総合診療部研修医と、ECG苦手医師のためのサイトです。

ECG-305:answer

 70才女性で、突然の喉の痛みと呂律不良です。

   この心電図からはACSを考えるしか、ありませんね。他には、考えられない。

 問題は、どういう状況でACSが発生したのか? です。病歴を検討します。

◎ 突然の発症。

◎ ショック状態。

◎ 血圧の左右差。

 まず大動脈解離を、考えますね。

◎ ろれつが回らない。片麻痺の出現。

 脳血管を噛んでしまった解離のようです。

 心電図無しで、原因疾患(大動脈解離)は想定されます。

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 今度は、心電図解析をしてみましょう。(臨床情報なしで、、)

Ecg3052erweb

クリックすると、ECGが拡大します。

  II, III, aVF  誘導でのST上昇を示す。

  •    I, aVL  誘導でのST低下を示す。(ミラーイメージ)
  •   P 波がない。Junctional rhythm と考えます。徐脈だし。

 当然、下壁の梗塞です。側壁への影響が弱く、リズム失調があり、右冠動脈が責任病変と考えます。

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 この心電図の情報だけで=臨床情報なしで=議論すると、ちょっと大変です。

研修医「先生!この心電図を見て下さい。急変で来院したんです。」

循環器医「おっ、ACS-RCAだ。すぐに緊急カテの手配だよ。」

研修医「すでに、放射線科・カテ室看護師に連絡済みです。」

循環器医「反応が素早いね。Door to Balloon timeを縮めたね!」

 上記のような、おめでたい結論に飛びつきそうです。

循環器医「ところで、病歴と理学的所見等は、どうなってるの?」

 手練れの指導医ならば、ちゃんとここまでチェックするはずです。

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 すぐに、造影胸腹部CTが撮影されました。

Ecg3053ctweb

クリックすると、拡大します。

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 胸腹部の造影CTでは、くるくるとカールされた intimal flap が描出されています。上行大動脈に留まり、Stanford-A型です。

 転院後、緊急の心臓外科手術が施行されました。右冠動脈入口部は解離しており、パッチ閉鎖と新規バイパスが施行されました。上行大動脈置換術・脳血管再建も行われており、回復は順調でした。

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 大動脈解離による心電図変化は、心合併症を示唆します。

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◎ ST上昇は、RCAACS 合併を示唆します。

   →解離が発生するときは、RCA 入口部を噛み込みやすい

   →LMTを閉塞したら、おそらくsudden deathです。

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◎ 解離による心タンポナーデ等で、ST低下生じ得る。

   →但し、機序は明快でない。

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◎ 高血圧症の合併も多く、元々ST低下している可能性あり。

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 まとめです。

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 大動脈解離(Stanford-A)で、緊急手術となりました。

 合併症として、ACS(RCA)と、大動脈解離による脳梗塞があるも、後遺症は最低限で治まりました。

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ACS と思ったら、大動脈解離を除外する習慣をつけましょう! 

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今回は、小菅雅美先生の

 心電図で見方が変わる急性冠症候群 文光堂

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を、参考させて頂きました。名著です。must-buy!  です。

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