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Cardio2012のECGブログ-2019改

=上級医がやっている危ない心電図の見分け方= ECGにまつわる基本的な諸問題:総合診療部研修医と、ECG苦手医師のためのサイトです。

ECG-308:answer(2/2)

 80才代女性で、呼吸苦の発生でした。

もちろん、(たこつぼ心筋症)でした。

直感的には、他の診断は無いのですが、詳しく理路を追ってみます。

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 入院時のER心電図(X-2 days)は、特に指摘すべき点はありません。

Xdayの心電図は、明らかなST-T変化です。数日で、何かが起きてることは確かです。呼吸苦が出現する、何かです。

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発症時の12誘導心電図では、陰性T波が沢山あります。

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クリックすると、ECGが拡大します。

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たこつぼ心筋症

ACS(LAD領域)

* 肺塞栓

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 まず、この三択となりそうです。

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〔肺塞栓ならば、〕

◎ 呼吸苦&SpO2の低下が、突然発生すれば、可能性あり。

 II音の分裂=IIp成分の遅れによる、があれば、急性右心負担で、事前確率Up。

◎ 心エコー右心系負荷が明瞭ならば、重度の肺塞栓。

         →でも、軽症ならば右心負荷像は、ハッキリしません。

         →その負荷像が新規のものかは、以前のエコー像との比較が欲しい。

ACS/LADならば、〕

急性心筋梗塞として完成すれば、CPK値とトロポニン値は、正常上限の10以上となります。PCIが早期に成功すると、最大値はどんどん下がります。

障害部位の末梢部(=冠動脈の走行に沿った)の壁運動障害。

ちゃんと冠動脈に病変(狭窄/閉塞)が、あるはず。

旧分類のUnstable anginaならば、CPK値とトロポニン値の上昇は、限定的。

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  ここで、ワンポイント。

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CPK/心筋トロポニン値は、ACS/肺塞栓/たこつぼ、のどれでも上昇するので決定的鑑別には、使えません。

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  この症例は、突然の発作で、陰性T波が広く出現し、心尖部が球状に無収縮となり、心基部が代償性の過収縮するのを、心エコーで確認しています。冠動脈にも、問題ありません。

  経時的に、心機能も改善しました。たこつぼ心筋症以外は、考えられませんね。

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 ここで、ワンポイント2。

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 心電図は、たこつぼ心筋症の補助診断です。これのみで確定診断となりません。

しかし、この所見があれば、(たこつぼ心筋症じゃないよね)と、除外診断に使える所見があります。けっこう、有名ですね。タコツボ心筋症急性期では、

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 V1は、心基部の誘導です。心尖部たこつぼでは、殆ど変化しない誘導なんです。ここで、ST-T変化が大きければ、ACSや肺塞栓の方が妥当です。

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心尖部の誘導となる(-aVR)でのST上昇が急性期には、aVRではST低下となります。

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 この症例では、aVRに変化がありません。aVRがあんまり動かない(たこつぼ心筋症)は、けっこうあると云う印象です。(←私の印象ですが)

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クリックすると、ECGが拡大します。

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  タコツボ心筋症の心電図変化は、急性期と亜急性期に分けて考えましょう。

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急性期は、ST上昇が主体。発症数時間以内~1日くらい。ACSとの鑑別は難しい。V1でのST上昇 or/and aVRのST上昇があれば、(たこつぼ心筋症)は、ほぼ除外される。ACSの診断のために、緊急冠動脈造影を行うのか、冠動脈造影CTを行うのかは、議論がありますね。

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 亜急性期は、ST上昇が基線に戻り、みんな知ってる陰性T波が出現します。QT延長がACSよりは、多い傾向にあります。傾向であって、鑑別にはなりません。

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 XdayX+23days の比較をします。

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   T波の陰転は、経時的に悪くなっていますね。

   胸部誘導のR波高は、経時的に高くなっています。これは、急性期の心筋障害の出現(standstill)で、起電力が低下してためです。

  心エコーを見て、分かりますように(answer1/2参照)、R波高の回復と共に、左心機能も改善も認められます。心尖部Ballooningは、無くなりました。

  でも、陰性T波は残っています。

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  多くの(たこつぼ心筋症)は、このように1~2週間で、心機能改善を認めます。心電図自体の変化も無くなる例も多いんです。

   しかし、数ヶ月経っても心機能自体が改善しない症例や、不整脈心不全・心破裂で、失う症例もあるんです。急性期を、外来で診ることはできません。

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  そもそも、(たこつぼ心筋症)の原因は、まだ分かっておりません。根本治療は、まだないんです。

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  なお、この疾患概念は 、疾患名から分かるように、日本発なんです。広島市民病院の佐藤光先生が、提唱されました。これ、知っておいて下さいね。

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 まとめです。

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【 (たこつぼ心筋症)の確定診断は総合的。心電図は補助診断機能です。 】

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【 急性期はST上昇主体。亜急性期が、QT延長の陰性T波の出現。 】

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V1でのST上昇 or/and aVRのST上昇があれば、(たこつぼ心筋症)は、ほぼ除外。 】

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【 急性期は冠動脈評価は必要でしょう。 】

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【 R波高は、経時的改善が期待できる。myocardial standstill 】

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