80才代女性で、心不全でのER搬入でした。
当初は、心房細動ベースの心不全患者として加療開始していましたが、心筋トロポニン値の上昇が進み、緊急心カテ(PCI)となりました。
【 わかりにくいACSは、きっとLCX病変だ 】
苦し紛れの法則ですが、その気になって心電図をお復習いしましょう。
(ER搬入時の心電図:解説)
V6で、ST0.5mm上昇とT波の後半部陰転化と思えるが、基線が不安定なだけかもね、と軽くスルーしそうです。 I 誘導と aVL はT波がflatなだけだし。
慢性の心房細動のようです。
念のためと、研修医は経時的血液検査を行いました。すると、心筋トロポニン値の赤丸急上昇が確認されました。あれ、心不全への対症療法のみでは、いけないのでは?
今度は、ACS狙い撃ちの12誘導心電図+V7,8,9&右側胸部誘導が記録されました。
(ER搬入、三時間後の心電図:解説)
V7,8でST上昇あり。V2,3はミラーイメージのST低下か。
今度は、aVLもST上昇のようです。
(LCXのACSは、この程度のST-T変化でも、すくい上げる必要あり。)
全てを合算して、回旋枝領域のACSを想定し、緊急心カテとなりました。
(PCI前のシネ画像)
回旋枝(LCX #11)での完全閉塞でした。(ミドリの▲部分)
(左上の#6は、造影剤が上手く乗らず、狭窄ように見えております)
側壁~後壁の虚血でした。
心エコーで分かりそうですが、もともとの心機能が落ちていると、局所性の壁運動障害は熟練者でないと、分別できないこともあります(←やや言い訳)。
また、この症例搬入時に、CPAも別搬入されており、ERは大変でした。
V2,3,4のST低下ハッキリしており、この心電図の方が、虚血発作の匂いが強くしますね。
(12病日の心電図)
心房細動+左室肥大です。ACS亜急性期とは、この1枚の心電図からは読み取れません。
今回の教訓(LCX-ACS)は、以下のようにします。
【 回旋枝のACSは、心電図への反映が時に微妙・・ 】
【 V7,8,9まで記録すべし。この部分でST上昇あればSTEMIデス! 】
【 心エコーでの左室の短軸/四腔像で、自由壁運動を判定すべし 】
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