これだけ心臓聴診 (コラムも100回目となりました)
以前、twitterにUpした内容を編集しております。
この表題は、もちろん(これだけ心電図)への、オマージュです。では、始めます。初期研修医への(これだけ心臓聴診)です。
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心臓聴診のキモは、聴診器を患者さんの胸にきちんと、あてることです。ホントなんだってば !! 思い出してごらん、内科研修を離れてから、ちゃんと聴診器使ってますか?
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心雑音です。レービン(Levine)分類〔I - VI〕は、知ってますね。聴診時の音量は、定量化出来ません。感覚的な分類です。循環器科医師の間でも、判定はよくずれます。
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なお、Levine-I/IIはERでは、まず聞こえません。日曜日の午後のエアコンが入っていない個室なんて状況でないと、聞こえない程度です。ERで心雑音が聞こえたら、III/VI 以上です。(うちのERではね。)
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心雑音は、beat by beatでくり返すことを、確認して下さい。聴診器の摩擦音・腸音・呼吸音・咳・(あなたの)幻聴など、バイアスは沢山あります。反復性に留意です。
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難しいことを考えずに、心電図の胸部電極と同じ6カ所で、聴診することをお勧めします。ほんの少しのずれですが、Levine分類で2step ほど変化する事が良く有ります。(ex. V3でLevine-IIIが、V4でLevine-Vの音量へ!)
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各々の場所で、4~5心拍は聞いて下さい。何もなければ=聞こえなければ=終了です。心雑音が聞こえたら、最大音量の場所で、じっくりと聞き直して下さい。
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でも、もう一回云います。聴診器を当てることが、一番大切です。心雑音があったならば、それが何を意味するか、ゆっくりと考えて下さい。本でも、先輩医師でも、youtubeでも、なんでも利用しましょう。
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もし、V5,6の部位で最大音量の心雑音があるならば、それは大動脈弁が音源の可能性はかなり低いでしょう。胸骨正中線より右側に、最大音量があれば、それは僧帽弁由来ではないでしょう。アバウトですが、役に立ちます。
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心雑音があったならば、どこから来ているのか、心エコーくんと相談しましょう。安易だ!と怒る医師も多いと思いますが、最後はcardiac echo で確認するんです、みんな。
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心雑音の原因を、病歴・理学的所見・心電図・胸部レントゲンから、納得のいくロジックで推定できる指導医をお持ちならば、あなたは幸せ者です。その方を、最終目標にして下さい。(ここは、minimum-心臓聴診の勧めです)
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心雑音が収縮期と拡張期の鑑別は、心電図モニターを見るか、頚動脈拍動を指で触れながら聴診します。拍動を触れる時=収縮期です。60msくらいのずれで済みます。橈骨動脈触知だと、ずれが大きいので、お勧めできません。
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さて、胸壁のどこに問題があるのか?聴診前に当たりをつけるのが、(視診)と(触診)です。心拍動が、見える・触れる場所は、心雑音が隠れている可能性大です。
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また、触診では thrill を触れる事があります。心雑音の低音部分が、触れるわけです。それなりの大きな問題が心臓で生じています。AS,VSDなど。
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拡張期雑音の代表は、ARです。(拡張期)灌水様雑音と呼ばれますね。シャアアァァァァ・・・・ってな感じです。呼気音と似ているので、要注意です。やはり beat by beat での反復性を、きちんと確認します。(できれば、呼吸停止してもらいましょう)
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聴診は、心雑音を聞くだけ?過剰心音も聞きましょう。III音とIV音です。これらが聞こえるのは、不全心です。(左室の)拡張障害です。右室のお話しは、省略(よくわからないし)。ベル型のほうでね。優しくあててね。
今は、III音の方が、IV音より重視されているようです。どっちも左室の拡張性が悪いので、左房から落ちてきた流入血が、ドンと音を立てるんです。左室の受動的拡張時に起きるのが III 音。左房収縮で押し出される時に起きるのがIV音です。Afib.では、IV音はない。
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I,II 音は、弁閉鎖時の音で爪で爪を弾くような(パチッ)と云うような音です。III,IV 音は、指の腹でドンと机を叩くような音です。
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IV音は I 音の直前。III音はII音の直後。なんですが、ちょっと頻脈になると、
ド・タッタ、ド・タッタ ⇒ IV音性ギャロップ。
タッタ・ド、タッタ・ド ⇒ III音声ギャロップ。
でも、現実には、
--ッタ・ド・タッタ・ド・タッタ・ド・タッタ・ド・タッタ・ド・タッタ・ド・タッタ・ド・タッタ・ド・タッタ・ド・タッタ・ド・タッ--
あははは、、、IV音かIII音か、わからないよ~(・_・?)。
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話は飛びますが、内視鏡専門医を2グループ分けて、GERDの重症度分類を画像上で行うと、数割違いが出てしまうようです。
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NYHA分類と同じで、ブレはあるけれど、医療者同士の共通認識として、Levine分類が必要なんです。ぶれたって構わない、それくらいの認識でいいんです。(と、私は思っています)
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但し、心房細動ではRR間隔が変動するので、音量変化が発生します。当たり前では、あります。
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なお、聴診所見のカルテへの記入方法は、先輩医師に教えてもらってね。説明できない時は、この人から聴診を習ってはいけないと云う情報が得られます。
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なお、以下の心雑音は、今は覚えなくていいんです。(こういう所から入ると、すぐ挫折しますから。。)
*Austin-Flint 雑音
*Graham-Steell 雑音
*Rivero-Carvallo 雑音
など。心雑音は、収縮期雑音か・拡張期雑音か、を弁別できればOKです。
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以上、physicalを大切にする医師から、怒られそうな心音のお話しでした。
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