60才男性の初めての心不全発作でした。
指導医に直言できるナイス研修医 A。
還暦の指導医 B。
A 「B先生、これ聴診所見なしで診断ってあり得ないでしょう。」
B「それ提示しちゃうと、心電図要らないんだよね。」
A 「じゃ、心電図解説から始めましょう。どうぞ!」
B「(すぐ仕切るんだから・・)再掲すると。
洞調律です。胸部誘導は、高電位。T波は尖ってるね。でも、高カリウム血症はないんだ。」
A 「心電図から、強い根拠で診断が出てくるんですか?」
B「言い切るのは、無理だと思う。体型的問題(極度のやせ)がなければ、左室電力が高まる病態を考える。」
A 「長期の高血圧・大動脈弁疾患・心筋症ですね。」
B「レントゲンを見てみよう。気になる所見は?」
A 「肺野はきれいですね。胸水もなし。IV弓は突出しているけど、III弓の突出無し。左房拡大してないと思います。」
B「胸部レントゲンで、矢印(↓)のように左室長軸方向に延びたようなIV突出だと、大動脈弁逆流(AR)をぼくは想起するんだ。」
A 「ホントですか~?」
B「または、肥大型心筋症ね。心臓の肩が張ってるなんて云ってた事も有る。ただ、レントゲンの深読みは、心エコーが発達していない時代にやっていて、外れもけっこうある。」
A 「で、聴診所見の開示を行います。これって、スターウォーズのダースベーダー呼吸音みたいですよね。」
B「その比喩は、初めてだな。たしかに、収縮期・拡張期の2相性心雑音は、似てない事も無い。特に呼気がAR sound風。実臨床でも、AR雑音と誤認することあるんで、要注意。
正確には、以下の形(模式図)です。
心電図とレントゲン所見から、こんな心雑音があるのでは?と聴診するのもアリなんだ。(←ココ、反論ありそう。。)
注意すべきは、収縮期雑音があると=ARではAS相対的心雑音がある=そこに気持ちが行って、拡張期雑音を聞き逃すんです。」
A 「収縮期雑音を聞いたら、拡張期雑音を探せ!」
B「そうなんだ。」
A 「もう、聞くの十回目くらいですよ。」
B「教育は、反復だ。」
A 「ハイハイ、確定診断はやっぱり心エコーですね。」
(to be continued…)