今、内服のβ-blockerの存在意義は、心不全の予後改善となりました。
*生命予後の改善。
*突然死の減少(不整脈死の減少)。
*Reversed Remodeling。
などなど。
なぜ効果するのかは、いろんな説明があるけど、
【 心拍数の減少とイベント減少が、相関している 】
は、誰もが承認しております。
日本での実質的に使用するβ-blockerは、
*アーチスト(カルベジロール)
*メインテート(ビソプロロール)
の二つです。
アーチスト(カルベジロール)は、αβ-blockerです。
同じαβ-blockerに、アロチノロールがあります。
降圧薬としていろんなβ-blockerが出てきましたが、テノーミン(アテノロール)が有名で、他はどんぐりの背比べでした(降圧効果として)。
アーチストもアルマール、どっちもどっち。
αとβの遮断の比率が、どうのこうのと、当時は云われていましたが、覚えている方いますか??
https://www.adalat.jp/ja/home/pharmacist/basic/03/t36.php
より
アーチストは、心不全治療薬という新たな生き残りを果たしたのは、ご存じの如くです。
悲劇は、アルマールに起きました。
糖尿病治療薬(SU剤):アマリールの登場です。後から登場しました。
アマリール(グリメピリド)は、なかなかいけてるSU剤です。
*一日一回投与でもいい。
*インスリン感受性改善効果がある(と云われる)。
*低血糖発作出現が、相対的に少ない(と云うdataがある)。
当時は、こればっかり使っていました。
問題は、薬剤の名前が似ていることです。
糖尿病のない患者さんに、SU剤投与はとっても危険です。
当院は薬事委員会の決定として、アルマールを採用終了としました。誤薬防止目的と、αβ-blockerはアーチストがあるためです(二つも要らないし)。
心不全適応もないアルマールは、後発のSU剤アマリールに押されてしまうと云う、悲劇でした。
そして遂に2012年度、アルマールは先行品目であるにも関わらず、商品名を変えます。(アルマール錠)→(アロチノロール錠)と、ジェネリック医薬品の様に、薬剤名表記となりました。
http://www.hosp.yamanashi.ac.jp/FileUpload/file/yakuzaibu/dibox0628.pdf
http://dm-rg.net/news/2012/01/012014.html?pr=dmrg001
さて、どのβ-blockerであれ十分量投与すれば、おのずと徐脈を呈します。ちっとも徐脈化しないβ-blockerは、効いているか疑問です。
高齢化すると、腎機能が必ず低下します。アロチノロールのような腎代謝性のβ-blockerは、特に血中濃度が上昇します。
潜在的洞機能不全があれば、徐脈・ポーズはさらに顕著となります。
ECG-325は、
◎超高齢者でのβ-blocker(アロチノロール)の引き際を見誤った。
◎β-blockerの中止で、危機を回避できた。
という教訓を含む症例だったんですね。