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Cardio2012のECGブログ-2019改

=上級医がやっている危ない心電図の見分け方= ECGにまつわる基本的な諸問題:総合診療部研修医と、ECG苦手医師のためのサイトです。

【 コラム-104:あるαβ-blockerの悲劇 】

今、内服のβ-blockerの存在意義は、心不全の予後改善となりました。

 

*生命予後の改善。

*突然死の減少(不整脈死の減少)。

*Reversed Remodeling。

 

 などなど。

 なぜ効果するのかは、いろんな説明があるけど、

 

【 心拍数の減少とイベント減少が、相関している 】

 

 は、誰もが承認しております。

 日本での実質的に使用するβ-blockerは、

 

*アーチスト(カルベジロール)

メインテート(ビソプロロール)

 

 の二つです。

 

 アーチスト(カルベジロール)は、αβ-blockerです。

 同じαβ-blockerに、アロチノロールがあります。

 

 

 降圧薬としていろんなβ-blockerが出てきましたが、テノーミン(アテノロール)が有名で、他はどんぐりの背比べでした(降圧効果として)。

 アーチストもアルマール、どっちもどっち。

αとβの遮断の比率が、どうのこうのと、当時は云われていましたが、覚えている方いますか??

 

 

https://www.adalat.jp/ja/home/pharmacist/basic/03/t36.php

より

 

 アーチストは、心不全治療薬という新たな生き残りを果たしたのは、ご存じの如くです。

 

 悲劇は、アルマールに起きました。

 糖尿病治療薬(SU剤):アマリールの登場です。後から登場しました。

 

 アマリール(グリメピリド)は、なかなかいけてるSU剤です。

 

*一日一回投与でもいい。

インスリン感受性改善効果がある(と云われる)。

低血糖発作出現が、相対的に少ない(と云うdataがある)。

 

 当時は、こればっかり使っていました。

 

 問題は、薬剤の名前が似ていることです。

 糖尿病のない患者さんに、SU剤投与はとっても危険です。

 

 当院は薬事委員会の決定として、アルマールを採用終了としました。誤薬防止目的と、αβ-blockerはアーチストがあるためです(二つも要らないし)。

 

 心不全適応もないアルマールは、後発のSU剤アマリールに押されてしまうと云う、悲劇でした。

 

 そして遂に2012年度、アルマールは先行品目であるにも関わらず、商品名を変えます。(アルマール錠)→(アロチノロール錠)と、ジェネリック医薬品の様に、薬剤名表記となりました。

 

http://www.hosp.yamanashi.ac.jp/FileUpload/file/yakuzaibu/dibox0628.pdf

 

http://dm-rg.net/news/2012/01/012014.html?pr=dmrg001

 

 

 

 さて、どのβ-blockerであれ十分量投与すれば、おのずと徐脈を呈します。ちっとも徐脈化しないβ-blockerは、効いているか疑問です。

 高齢化すると、腎機能が必ず低下します。アロチノロールのような腎代謝性のβ-blockerは、特に血中濃度が上昇します。

 潜在的洞機能不全があれば、徐脈・ポーズはさらに顕著となります。

 

 ECG-325は、

◎超高齢者でのβ-blocker(アロチノロール)の引き際を見誤った。

◎β-blockerの中止で、危機を回避できた。

 という教訓を含む症例だったんですね。