循環器看護師の方々への(LAD-ACS)症例解説です。
広範囲前壁梗塞と聞いて、どんな冠動脈病変が思い浮かびますか?
前下行枝病変しかありませんね。この12誘導心電図からは、かなり起始部の閉塞だと思われます。でないと、これだけ多くの誘導でST-T変化は起きません。
まず、右冠動脈(RCA)の造影です。
* RCAに、問題はありません。
* 側副血行路は、はっきりしません。
* 三枝病変ではないことが、わかりました。
- ◎三枝病変だと、緊急CABG/IABP使用などを含め、治療戦略が変わってきます。
左冠動脈(LCA)の造影です。
* 回旋枝(LCX)は、問題なし。
* 前下行枝(LAD) #6の99%閉塞で、遅延造影となります。
* 同枝間バイパスはないようです。
*大きなLADによる急性心筋梗塞で、早急な冠血流再開が、必要です。
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ガイドワイヤー通過と血栓吸引です。
*ガイドワイヤーをLADに通過させます。
*血栓吸引(thrombuster)を#6周辺で施行します。
*大きなLADの全貌が、見えてきました。
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血管内超音波(IVUS)とSTENT留置です。
* 血管内超音波(IVUS)で、病変を評価します。
* (適切な)STENTを留置します。シナジーステント30×28mm.
PCI終了時の確認造影です。
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* #6にstent留置です。
* 血流が回復し、対角枝(D1)も確認されます。
* LADがD1を含め心尖部周囲を支配しています。
タリウム心筋シンチを施行しました。
* PCI後1週間経過しております。
* 赤矢印(↓)の部分=心尖部の心筋が欠損しています。
* 心室腔の拡大は、無いようです。
cardio2012-ECG313-echoUp 01 LVlong
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左室長軸像です。
心室中隔の心尖部よりの部分が、壁運動低下しています。
左室の拡大は、著明ではありません。
PCIにより障害領域は、限定的になったようです。
cardio2012-ECG313-echoUp 02 4C without LV thrombus
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心尖部からの四腔断層像です。
心尖部に心室瘤がありますが、小さめです。
そのうちもっと改善するかも・・と安心気味でしたが。。
cardio2012-ECG313-echoUp 03 4C with LV thrombus
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心尖部を丹念に見ていくと、やや浮動性の左室心尖部血栓が見つかりました。
◎心エコーは、三次元を二次元でスライスしていきます。心室瘤があった場合は、血栓があるかも!との前提でスキャンしないと、見落としに繋がります。要注意です。
心電図と各種検査結果の統合画面です。
ERで出会ったの急性心筋梗塞でした。
*広範なST−T変化を呈しました。
*LAD-#6の99%(遅延造影)病変でした。
*心尖部の心筋壊死を、心筋シンチで確認。
*心エコーでは、左心拡大(remodeling)は、まだありません。
*しかし、よく観察すると心尖部血栓(やや浮動性)を確認しました。
この患者さんには、抗血小板薬1剤・β-blocker・RAS阻害薬と抗凝固療法がなされ、リモデリング・塞栓症合併阻止に努めております。
1枚のER心電図から、このような展開も想像出来ると、臨床力アップです!