=AVNRTの典型例でした=
AVNRT:房室結節回帰性頻拍
(atrioventricular[nodal]reentrant tachycardia)
=上級編解説(のつもり)=
この図のみで納得される方は、上級だと思います。
(実力心電図)本 クリアされていますね。
なお、AVRTとAVNRTの鑑別は、本当は難しいです。以下に、よい解説があります。(難しいと云うことが分かる)
https://intmed.exblog.jp/7708466/
なお、房室結節部に近い場所のケント束でも、同様の事が起きえるので、AVRT vs AVNRT との設問は無理筋です。
=中級編解説(のつもり)=
*ラッキーな症例です。
*逆行性のP波 (pseudo-s, pneudo-r')が明瞭です。
*心房に興奮が戻る時間が短いので、QRS直後に認めます。
*slow-fast reentryの場合です。
赤矢印(↑)が、pseudo-s(シュードエス)
緑矢印(↓)が、psuedo-r(シュードアール)
拡大してみました。
房室結節部分から上方の心房に、逆行性P’は流れるので、下壁誘導( II, III, aVF では陰性P'(=psuedo-s)波を記録します。
なお、V1には向かっていく興奮のため、陽性P’(=pseudo-r’)を記録します。
こんな風にAVNRT→NSRへの連続波形で、pseudo-s(r)が消失してくれると、納得ですね。
この症例は、30年前にVVI-Pacemakerが入っておりました。当時は、完全房室ブロックでも取り敢えずVVIでいいや、との考え方も一部有ったんです。(生存が保証されるから、シンプルな方が良い・・てな考え方でした)
ATPの急速静注で、頻拍発作を止めています。3~6秒程度の心静止が起きるのは、この場合普通なんですが、心室ペーシングが作動しています。
連続ではありませんが、□で囲んだ洞調律時のQRS波形で逆行性のP’波(pseudo-s, pseudo-r’)が無くなっているのが分かります。
上室性の頻脈発作での、目の付け所👀を解説しました。
同様の問題を、jasmineさんが最近webにUpされています。
こちらは、ちょっと難しいですよ。
http://shindenzunoheya.blog.jp/archives/22330454.html
=初級編解説(のつもり)=
頻脈発作を見たら、
Narrow QRS tachycardia (QRS幅が120ms未満の頻拍)
Wide QRS tachycardia (QRS幅が120ms以上の頻拍)
どちらなのかを、確認しましょう。
えっ、頻拍の定義ですか?
漠然としておりますが、村川裕二先生風に云いますと、
「頻拍とは、あなたが耐えられない心拍数です。」
100/分以上が、常識的でしょう。
Narrow QRS tachycardiaの鑑別は、
*洞性頻拍
*頻脈性の心房細動
*2:1伝導の心房粗動
*AVNRT(房室結節回帰性頻拍)
*AVRT(房室回帰性頻拍)
*(稀に、心室中隔由来のVT)
これ以上は、(今回)追求しません。
AVNRTが発生する理由を説明下した解剖図です。
多くの知識が、実は必要です。
*洞結節
*房室結節
*速伝導路 (そくでんどうろ)
*遅伝導路 (ちでんどうろ)
*リエントリー
*上室性期外収縮(SVPC)
今回は、房室結節とその周囲でリエントリーが起きると理解して下さい。リエントリーとは、グルグル回ることです。
https://www.kango-roo.com/sn/k/view/2215
(看護roo!)のwebsiteは、いつもわかりやすく・素敵なイラストで解説があります。リエントリーの解説はココです。
AVNRTとAVRTを、上室性頻拍(PSVT)発生中にしっかりと鑑別するのは、難しいんです。考えすぎないようにしましょう。
なお、遅伝導路は正常洞調律時は、常にブロックされています。
房室結節(とその周囲の)リエントリー回路が回るときに、心房内を下部→上部に向かって心房内興奮が伝わります。
よって逆行性P波は、
*下壁誘導で陰性P’。
*V1では陽性のP’。
となります。
なお頻拍発作発生時は、Before(頻拍発作中)と after(洞調律復帰後)の比較が大切です。必ず記録して下さい。
でも、心電図検定試験は1枚の心電図で勝負です。よって、典型例のPSVTしか出せないはずです。これは、典型例です。
私が問題を作るとしたら・・・
90才男性が動悸で来院。
次の選択枝で、誤っているものを選べ。
a.) 房室結節回帰性頻拍
b.) 房室回帰性頻拍a
c.) 心房細動
d.) 上室性頻拍
e.) リエントリー性の頻拍
間違いは、当然 c.) ですけど。
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