Question:再掲の心電図
これを解読するための知識と思考法を、さらに紹介します。
まずは日本の英知より、引用です。
心電図の読み方パーフェクトマニュアル(p-273) 羊土社 2006年
QRSが脱落する前のRR間隔は、徐々に短縮することが多い。
最初の短いPR時間からの伸びが急激で、その後の伸び方はだんだん鈍くなっていくことが多い。
心電図学(p-1027) 石川恭三編 1986(第1版) 南山堂
Wenckebach周期の古典的特徴は、常にみられるとはかぎらず、Wenckebach型房室ブロックはしばしば非典型的となる(atypical Wenckebach A-V bolock)
メディカル・サイエンス・インターナショナル 2002年
Wenckebach型なら、房室伝導が再開した時のPQ時間は短縮している。Wenckebach型は、この短縮したPQ時間が徐々に延長していくので、最後のほうだけを見ているとわからなくなるのである。
このように、Wenckebach AV blockに関しては、12誘導心電図で見る限り、知見は安定しています。
房室伝導を理解する上で、Ladder algorithmで考えることは、理解を深めます。
*縦軸は、伝導する部位
*横軸は、時間経過です
なお、心房内・心室内でも伝導時間がかかるのですが、分かりやすくするために、垂線としております。事実、房室結節での伝導は正常人でもゆっくりなんです。
さて、Wenckebach AV blockを理解した上で、問題(ECG-358)の症例を検討しましょう。
かなりめんどうな症例です。
*房室ブロックの解析には、P波がはっきりした誘導が必要です。
*V1,2が適していますね。□
*肢誘導は、P波が分かりません。
*しかし、この通常の記録法は(連続記録)です。RR間隔の規則性は、肢誘導→胸部誘導と確認できます。これは、大切な知識です。
*赤い矢印↔部分を見ると、三心拍毎にRR間隔が延長していることが分かります。
*V1,2でP波とQRSの連続性を評価しましょう。
◯ PP間隔は、110bpmくらいとかなりの頻脈です。
◯ PR間隔は、2拍目ですでに0.20秒以上です。
◯徐々にPR間隔が延長します。
◯4拍目のP波は、QRS▼の中に埋もれて、房室伝導が途切れます。
◯再びPR間隔が元に戻りますが、0.20秒以上です。
◯肢誘導と胸部誘導の同時相記録です。
◯一番下に、II誘導を使ったリズムチャートがあります。
◯この不整脈が、一定の規則性にし互いRR間隔が延長するのがわかります。
◯V1,2で、Wenckebach AV blockパターンであることも分かります。
この問題が難しいのは、
*ベースが、頻脈であること。
*P波が房室伝導障害を来すときに、QRSの中に隠れていること。
*P波が肢誘導でしか確認できないこと。
よって、Wenckebach AV blockだと思って見ないと、すぐに気が付かない事なんです。
この症例は、P波が速い事より、交感神経の緊張状態であることが推察されます。房室伝導はふつう加速されます。
しかし、Wenckebach AV blockパターンが出現するのは、器質的に房室結節の伝導性が障害されてる(=病的な状態)ためと思われます。
次は、バリエーションを提示します。
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