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Cardio2012のECGブログ-2019改

=上級医がやっている危ない心電図の見分け方= ECGにまつわる基本的な諸問題:総合診療部研修医と、ECG苦手医師のためのサイトです。

【コラム-115:ACSのミラーイメージを棚卸しします】

 

STEMI-ACSの12誘導STEMI心電図診断は、次の2項目より判断されます。

 

*連続する2つ以上の誘導でSTの上昇を認める。

*対側誘導でのミラーイメージを認める。

 

 

今回は、ミラーイメージの棚卸しです。

以下の場合に、ミラーイメージは生じます。

 

*前下行枝閉塞病変で、心尖部を大きく回る(=wrapped LAD)でない場合。

  →V1-4でST上昇を示し、II,III,aVFでST低下のミラーイメージ

 

*右冠動脈の遠位部閉塞病変で、aVL・V1-3でST低下のミラーイメージ

 

*回旋枝の閉塞病変で、V1-3のV1-3でST低下のミラーイメージ

 

*左冠動脈主幹部病変で、II,III,aVFでST低下のミラーイメージ

 (+aVRでのST上昇。他の誘導の反応は色々です) 

 

=2021/2/3に、修正しました。Y氏のご指摘に感謝です=

 

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大体の目安ですので、厳密に捉えないで下さい。 

 

 

 

各々を見ていきましょう。

 

LAD-ACS(not wrapped-LAD) 

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前壁中隔の対側は、下壁誘導となります。 

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 これは、支配領域の広いLAD #6 just proximalでの病変でした。なお、心尖部を回る(wrapped-LAD)とはなっていません。

 V1-6,I,aVLでのST上昇を示しています。

 aVRでのST上昇はありません。

 II,III,aVFでのST低下を示しています。これがミラーイメージでした。

 

 心尖部を回って下壁まで支配すると、下壁もST上昇傾向となり、ST-T変化は相殺されてしまいます。(心エコーでは、巨大な心室瘤を認めるはずです。)

 

 

 

 

 

  

次は、こちらも参照してくださいね。

 

https://heart2019ecg.hatenablog.com/entry/2021/01/27/222155

 

 

  

RCA-ACS(遠位部閉塞)

現実的には、#3以後の閉塞症例となります。

Major RV branch以後の閉塞ならば、現実的な右室梗塞は発症しません。

 

II,III,aVFでST上昇を示します。

そのミラーイメージとして、aVL,V1-3でST低下を示します。 

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RCA-ACS(#3 total occlusion)

右冠動脈の#3-#4の境界部の完全閉塞です。

 

*II,III,aVFでのST上昇あり

*4AVの支配が広く、V5,6のST上昇まであります。

 (こうなると、RCAかLCXか、悩みます)

*aVL,V1-3で、明瞭なST低下のミラーイメージを認めます。

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LCX-ACS

回旋枝領域は、背側の左室心筋を支配しており、直接的に虚血を反映しにくい部分です。心電図では、分からない(・_・?)こともあります。

 

V7-9を記録すると、後壁のST上昇を捉えられます。但し、波高も小さく慣れないと判定が難しい。

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現実的にはLCX病変は、(近位部病変)・(遠位部病変)と分けては考えません。私には、ムリ。

 

*V1-3でのST低下がミラーイメージです。

*V5,6やaVL,I誘導でST上昇を呈するれば、LCX病変を考えます。

 

 

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なお、対側誘導のST-T変化は、ST上昇度とST低下度が比例するわけではありません。ここ、注意して下さい。

 

 

こうやって見ると、ミラーイメージが物理的対称性を持っていないことが分かりますね。ここも大事です。

 

 

PCI前後のCAGです。

回旋枝の支配域を感じ取ってください。殆どが背中側なんです。

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LMT-ACS

 

回冠動脈主幹部閉塞とは、LAD閉塞+LCX閉塞のことですね。

これだけ広い範囲で虚血が起きると、お互いに牽制し合って、ST-T変化がハッキリしなくなります。気を付けましょう。

 

II,III,aVFは、右冠動脈の支配領域ですので、ミラーイメージとしてST低下を示します。ST上昇が他の誘導でない+ショック状態では、これを想起して下さい。

もちろん、aVRのST上昇は最大のポイントです。#心電図検定試験では、この所見がないLMT-ACSは問題となれません。

 

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aVRのST上昇も、広汎な心内膜側の虚血のミラーイメージとして捉えることが出来ますね。

 

 

 

 

 

 

 

 

https://heart2019ecg.hatenablog.com/entry/2018/09/10/180621

 

https://heart2019ecg.hatenablog.com/entry/2018/09/11/235152

 

https://heart2019ecg.hatenablog.com/entry/2018/09/14/204408

 

https://heart2019ecg.hatenablog.com/entry/2018/09/15/223138

 

 

HCM患者さんのPAFでのACSです。血栓が、LMTを閉塞させました。

LMT-ACSでは、このように訳分かんない(・_・?)ST低下が広汎に起きる事があります。

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ミラーイメージがどうした・こうした、よりも、(危ない心電図)だ!と思って下さい。

 

 

今回の学び

【ミラーイメージの反対側に、ACS病変はあります。】

 

 

 

 

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