胸部不快感と呼吸苦でER搬入です。
では順を追って、(後付けの)心電図解釈を述べますね。
香坂俊先生が新著(もしも心電図で循環器を語るなら 第2版)で仰有っているように、
II,III,aVFでのST上昇は、下壁のACS
V6,I誘導でのST上昇は、側壁のACS
V1-5でのST上昇は、前壁のACS
と、割り切ってシンプルに考えるのが基本ですね。
(最初から、グチャグチャした思考に陥らないこと!)
では、この症例の心電図を解析しましょう。
II,III,aVFでST上昇を示しています。
→下壁梗塞のはずです。
aVLでST低下しています。
→これは下壁梗塞のミラーイメージなので、下壁のACS確定ですね。
但しST上昇は、II<III誘導です。
→RCAが 責任病変のはずです。
I誘導でST低下,V6でのST上昇です。
V1-4のST低下は、下壁誘導のミラーイメージです。
aVRではST低下です。
胸部誘導のST低下はLMT病変も鑑別に挙がりますが、心電図上は否定ですね。
CAG-control造影(LCA)です。
おっと、LCxの複数の有意狭窄病変があります。
CAG-control造影(RCA)です。
#3 で完全閉塞です。
心電図パターンと造影所見より、こちらが責任病変として、緊急PCIを行いました。
回旋枝(LCx)と右冠動脈(RCA)の二枝病変では、心電図が責任病変の決定打になることがあります。
#3 の病変にwireをクロスさせました。
RCAの末梢病変が描出されていますね。
#3 に血栓像が認められます。
RCAのcotrolの動画です。
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PCI(stent留置)後のRCA-CAGとPCI直後のICUでの心電図です。けっこうな支配領域を持ったRCAでした。
下壁誘導は、梗塞完成パターンですね。ST上昇があるために、まだ胸部誘導のST低下(ミラーイメージ)が残っています。
回旋枝は、翌日PCIしております。
経時的な心電図変化です。
胸部誘導は、ミラーイメージ似すぎませんでしたので、安定期にはST変化が無くなっています。(T波は、ちょっと高くなっているかも知れませんね。)
【教訓】
*RCA/LCxの二枝病変は、どっちが責任病変かで迷う。
*心電図が、その決定に役立つ(ことがある。)