ECG-120:60歳男性。呼吸苦で、来院されました。
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◯ (ECG) Afib,CRBBB, remarkable-RAD
◯ (Chest-XP) 胸水貯留。肺動脈拡大。右心系拡大(susp)
◯ 心エコー所見を得て、ASDと診断し、手術目的で転院。
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ASDは、今でもよく見る先天性心疾患です。
なぜ、よく見るのか?
心室での欠損孔と違って、
◎ どでかい心雑音になりにくい。
◎ そう簡単に、血行動態が破綻しない(例が成人となる)。
◎ よって、けっこう健康に育ち、出産してしまう女性もいる。
このような症例があるからです。
もちろん、合併心奇形やその重症度により、病態の進行は様々です。また、小児健診が発達した現在では、多くの症例は早期に見つかります。
でも、見逃されて、普通の内科に来ることが、やっぱりあるんですね。
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その気になって診ると、診断は難しくありません。
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◎ II 音の固定性分裂
→その気になって聞かないと、あっさり見逃します。
→II 音がとにかく割れている、と割り切って下さい。(固定にこだわらない)
→但し、CRBBBだともともとII音は割れてます。要注意。
◎ 相対的肺動脈弁狭窄
→肺動脈の血流増加で、P弁領域での短い収縮期雑音あり。
◎ 労作性の息切れ
→右心不全の徴候。
→これが出たら、心不全は、もう本物です。
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成人の場合には、喫煙や他の疾患のオーバーラップで、惑わされる事があります。
よく理由の分からない肺高血圧を見たら、必ず鑑別に挙げて下さい。
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腕のよい心エコーの技師さんが居れば、すぐに診断してくれます。
少なくとも、右心系がでかいし、、とまでは、心エコーでわかる技量を研修医の皆さんは、必ずつけて下さいね。
搬入時の胸部レントゲンは、右>左で、胸水が貯留しています。心陰影の左第 II 弓は、著明に拡大しています。側面像でも、心陰影の後方への拡大=右房がでかい!が分かります。
少し安定してから撮影した胸部造影CTでは、右心系の著明拡大と肺動脈の拡大が認められます。肺塞栓像は、認めません。(PAが、Aoよりでかい!)
TTE/TEE 心エコーで、ASDは確認されています。
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ASDの典型的 Patch closure 手術を施行して、5年経過しました。
胸部レントゲンでは、ご覧の様に、別人のようにシャープな心陰影となっています。PA tomyを行い、肺動脈も少し細くなっています。ADL自立です。幸い、進行性の肺高血圧症は起きておりません。
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さて、心電図です。
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心不全発症時には、心房細動化していました。(すぐに洞調律化)
CRBBBと極度の右軸偏位(=著名な右心負荷)が認められます。
右心不全が少し改善した時の心電図を提示します。
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