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Cardio2012のECGブログ-2019改

=上級医がやっている危ない心電図の見分け方= ECGにまつわる基本的な諸問題:総合診療部研修医と、ECG苦手医師のためのサイトです。

ECG-298:answer

 40才代女性です。労作性呼吸苦の患者さんです。

   心エコーでは、典型的な右室負荷を認めます。

   この症例のエコーのポイントは、

  •  左室短軸像での、D-shapeパターン(心室中隔の拡張期平坦化)
  •  右室・右房の明瞭な拡大
  •  右室壁は、可動性を示している。
  •  右室の乳頭筋の肥大が、はっきりしない。

Ecg298web

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   カラードプラ像で、先天性心疾患としての短絡血流を認めませんでした。

   房室関連も、問題ありません。

   右室乳頭筋の著明な肥大がない→幼少期からの右室圧亢進では、なさそう。

    肺血流シンチでの楔状欠損無く、肺動脈造影での血栓も認めません。

    何らかの後天性の肺高血圧症のようです。

    右室は、容量負荷であれ、圧負荷であれ、右室拡大を呈します。大動脈弁狭窄症のような求心性肥大は、起こしません、起こせません。基本的に、低圧系であるため、左室のような肥大のみでの対応は、できないのです。

 上記のことを、念頭において、心電図像は以下の様に想像されます。

  •   RVHとしてのV1-3 あたりの右室高電位はないでしょう。
  •   IRBBB,CRBBBは、合併している可能性あり。
  •   右室の拡大が著明なので、移行帯はV5以後にあるはず。(R=Sとなる場所)
  •   右室負荷としてのST-T変化(strain pattern)が、V1-2 であるかも。
  •   肺性P様の、尖りP波が II, III, aVFにあるかも。
  •   右軸偏位は、絶対ある!

  などど予想しました。

   で、現実の12誘導心電図+V7-9 です。

Ecg298112v789web

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  解説すると、以下の様になります。

Ecg2982web

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 この時に行われた右心カテ(Swan Ganz catheter)での圧測定結果です。

 

Ecg2983sgcatheweb

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PAからRVへの引き抜き圧波形と、右房圧波形を提示します。

PA収縮期圧=78mmHg、RV圧=83mmHgで、PSありません。

mPCWP=10mmHgで、左心系の問題での肺高血圧は、否定されます。

RA圧波形からは、明瞭なv波化はないようです。圧もそんなに高くない。

 この心電図のポイントは、

◎ 右軸偏位があること。

移行帯が、強く時計軸偏位変異していること。

 の2点ですね。

 右心系が危ない! と思えれば合格です。

 心電図から病態を想起する。病態から心電図を想像する。

 これができると、心電図解読は楽しいですよ。

  今回は、(危ない心電図の見分け方)に相応しい症例でした。

【 右心系の変化に、心電図は敏感です 】

【 Pulmonary Pは、感度・特異度あんまり高くありません 】

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