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Cardio2012のECGブログ-2019改

=上級医がやっている危ない心電図の見分け方= ECGにまつわる基本的な諸問題:総合診療部研修医と、ECG苦手医師のためのサイトです。

ECG-232:answer

  ECG-232:answer       
 70才代の女性が、突然倒れてのER搬入でした。
 下壁の急性心筋梗塞であることは、分かりやすいですね。
* II, III, aVF でのST上昇。
*    ミラーイメージとしての、aVL, I でのST低下があります。

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◎ 気になるのは、V1, V2 でのST上昇です。前壁の梗塞か、右室の梗塞か、判定が必要です。
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◎ 右側胸部誘導を見てみましょう。キレイにSTが上昇しております。日頃見慣れていないと、右側胸部誘導でのST上昇はぱっとしないものなのですが、この症例はしっかりとした上昇を示しています。こんなきれいなST上昇は、久しぶりです。

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クリックすると、ECGが拡大します。

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◎ さて、CAVB(complete AV block)は、理解出来ましたでしょうか?QRS間隔は等しく、PP間隔も等しいです。でも、P波とQRSの関連は、バラバラです。特に、この症例で通常の下後壁梗塞のCAVBと異なるのは、P波のレートが速いことです。普通は、P波レートも遅くなります。これは、洞結節動脈への虚血や、下壁梗塞による強い迷走神経反射によります。
 この心電図は、ぱっと見ると、2:1 AV blockと勘違いします。

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 この症例は、すぐにカテ室に送られました。RCA #1での完全閉塞です。よく見ると、洞結節動脈への血流は、保たれています。これが、P波レートを下げなかった一因かもしれません。

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 PCI終了直後のICUで記録した心電図です。房室ブロクは、消失し、明らかな洞調律です。II, III, aVF でのST上昇は、ほぼ基線に戻り、一部T波が陰転化しています。V1, V2 でのST上昇は、まだ続いています。

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クリックすると、ECGが拡大します。
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 なお、心エコーでは、前壁中隔の壁運動障害はありませんでした。また、右室の著明な拡大・心室瘤化もありません。血行動態としても、右室梗塞の問題は、生じていません。
  今回の教えは=私が学んだ=
【 V1, V2 でのST上昇から右室梗塞は示唆されても、血行動態学的=それに合わせた治療を必要とする=右室梗塞とは、限らない 】
 と云うことでした。