初期研修医A(1年目)
心電図を見て、ヤバイとまず思いました。
胸部誘導に広範なQSパターンを呈しています。徐脈ですし、ACSをまず疑いました。すでにかなり進行した状態かもしれません。緊急のPCIをするには、さすがに超高齢です。一時ペーシングでしのぐか?と考えました。
初期研修医B(2年目)
徐脈が一番気になりました。心エコーでは、左室の収縮性は良好です。この胸部誘導変化がACSならば、前壁中隔は全然動いてないはずです。
胸部レントゲン・心筋トロポニン・BNP値測定を測定します。
なりたての後期研修医C(3年目)
徐脈ですね。P波が見えません。心房静止状態か、完全房室ブロックの心房細動かもしれません。基線にノイズが多いので、f波はよく分かりませんね。
薬剤性の房室ブロックかも、薬歴を確認しましょう。
還暦の指導医(が、ぶらっとやって来て)
ねえ今時は、塩化カルシウムとカルチコール(グルコン酸カルシウム)と、どっちが主流なんだっけ?
研修医(A,B,C)
えっ・・・、ワー!!血清カリウム値すぐに確認!GI療法準備!アシドーシスは?メイロンは?
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上記は、話の都合上ちょっと盛ってます。
高カリウム血症の心電図は、
(1.) tall-T waveの出現:主に胸部誘導
(2.) P waveの消失なるもリズム整(sino-ventricular conduction)
(3.) QRS幅の拡大
(4.) 徐脈
(5.) サインカーブ状の波形となる
心電図問題を作るならば、(1.) か、(1.) & (2.) が必要ですよね。
今回の心電図は、(regularな)徐脈とP波の消失。V1-5までQSに近いパターンでした。
ACSに思考を引っ張られたのも、分かります。
ノイズが多いんですが、時系列で波形を見てみましょう。
クリックすると、ECGが拡大します。
QRS-ST-Tを見ても、高カリウム血症には思えませんね。
V1-3の記録を比較します。
クリックすると、ECGが拡大します。
K=5.9mEqでは、徐脈でP波(たぶん)ありません。ノイズ多し。
K=4.6mEqでは、徐脈は無くなり、P波もしっかりあります。
カリウム値と心電図変化は、あんまりパラレルではない。
心電図所見のみで、高カリウム血症を除外してはいけません。
なお、翌日の情報提供で、カリウム製剤が投与されていたことが分かりました。
K=5.9mEqはよく見る値ですし、心電図変化を起こさない例の方が多いです。利尿があり、バイタルサインが安定していれば、心電図モニターとカリウム吸着剤の使用で対応します、私は。
でも、このような症例もあるんです。