90才代の女性で、毎日お布団の上げ下げをされています。ある日、よいしょと布団を持って、失神してしまいました。
これで、Erb領域(第三肋間胸骨左縁あたり)に収縮期雑音があると云われれば、心電図を見ずとも、AS(aortic stenosis)と答えますよね。
そうです、この答えはASなんです。
では、ASを前提として、心電図を見てみます。
* 左室起電力増加の high voltage を認めない。
* ST-T変化あるも、軽度である。
あんまり、ASによる心電図らしくないんですね。
心エコー所見です。
CW(continuous wave)で、大動脈弁血流速を測定。
ベルヌーイの式に当てはめて、圧格差測定。
(約5m/sec.で、4V2として100mmHgの圧格差と暗算します)
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高齢者のASは、基本的に動脈硬化性です。かなり急速に進行するようです。心電図上で、明らかな高電位・ST-change(strain型)を示す以前に、心不全を呈することが、よくあります。
今回の教訓は、
【 心電図変化が少しでも、高齢者は重度ASがあります! 】
と、なるようです。
因みに、この方は夜に心房細動となっていました。
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ASの患者さんが、失神する理由は、ハッキリしていないのですが、
* 心不全発作による失神 (低酸素・急な血圧低下か)
* 不整脈発作 (心室頻拍・PSVT/Pafによる血圧低下)
* 迷走神経反射 (左室内圧の過剰上昇によるか)
たぶん、一過性の失神は迷走神経反射の結果かと、思われています。
聴診して、収縮期心雑音を聴取する症例は、心電図の所見に関わらず、心エコーで評価して下さい。特に、後期高齢者以上はね。
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