ど派手な心電図ですね。
II, III, aVF のST上昇が、メインの変化である事は、ご異議ないか思います。ミラーイメージとして、aVL のST低下もあります。
ST上昇は、III>II で、RCA病変を示唆しております。
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この症例の問題は、それ以外の誘導全てで、ST低下を示していることです。V2-4あたりで、ミラーイメージとしてST低下することは、下後壁の急性心筋梗塞では、よくあります。
この様な II, III, aVF 以外の全ての誘導でST低下するのを、RCA病変のみで説明するのは、難しいですね。
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説明に悩みつつ、緊急カテへ。
右冠動脈#2での完全閉塞です。責任病変でした。
STENT留置で、血流を改善させております。
前下行枝・回旋枝ともに、有意狭窄を認めています。RCAのACSにより循環動態が崩れ、この二枝の支配領域の相対的虚血が起こり、V1-6と I 誘導のST低下となったようです。
なお、aVRは明瞭なST-T変化を示していません。チョットだけ、ST低下のようです。RCAは絶対的虚血によるST上昇。LAD/LCXは、相対的虚血によるST低下。この複雑な虚血状況では、aVR君に何かの答えを求めるのは、きっと酷なことなのでしょう。
PCI直後の心電図です。
ST-T変化は、かなり穏やかになっています。II, III, aVF にQ波が出現し始めています。
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心電図の経時的変化です。
II, III, aVF で、陰性T波が出現しています。II 誘導のQ波が減少しているようです。下壁で時々ある現象です。梗塞部位がshrinkするようです。
V1-3の尖りT波の出現は、後壁の陰性T波の反映です。
この症例は、後日LAD/LCXの虚血解除の治療となります。
【 三枝病変では、一元的に説明出来ないST-T変化が起きることあり 】
この心電図、危ないよね!と思えたら合格です(^_-)。