60才代の女性が、胸部不快発作でした。
胸部不快感+この心電図で、ACSだから、循環器科を呼ぶんだ!!
は、間違いないとして、心電図判読です。
クリックすると、ECGが拡大します。
- ◎ 洞調律、AV-blockを含め不整脈なし。そんなに頻脈でもない。
- ◎ V1,2,3のST低下あり。
- ◎ V5,6のST上昇有り。
- ◎ II, III, aVF のST上昇が著明です。
- ◎ I, aVL のST低下が著明です。
- ◎ VII < VIII のST上昇を示す。
下後壁・のACSとして取り扱います。
多分、RCA病変だろうな、と考えて対応するでしょう。
次に、側壁誘導と、右側胸部誘導です。
クリックすると、ECGが拡大します。
◎ V7,8 ST低下あり。側壁への虚血の拡がりは、少ないというか、むしろミラーイメージなのでしょうか?
◎ I, aVL のST低下も合わせると、側壁自体の虚血変化は、少ないようです。
◎ V5,6のST上昇部分に限られているようです。
◎ V3R/V4R にST上昇が軽度見られます。たぶん、右室の心筋虚血です。
(シネフィルムで分かりますが、閉塞部位はRCA #3であり、右室壁の大きなRV枝は閉塞を免れています。これが、右室誘導枝でのST上昇が少ない原因でしょう。)
(さらに、心エコーでは、右室の拡大・壁運動低下を認めません)
上記の側壁誘導と、右室誘導の所見まで合わせると、やっぱりRCAの病変なんだろうな、と推測させます。
左冠動脈は、LCXを含めて、閉塞性病変はありません。
右冠動脈は、#3で99% with severe delayを示しています。そして、大きな右室枝も認められます。右側胸部誘導でのST変化が比較的乏しい理由のようです。
前回と比較してみましょう。
右冠動脈(#3)閉塞と、回旋枝(#11)閉塞との比較です。
クリックすると、ECGが拡大します。
12誘導心電図だけの比較では、確定的とは、あまり云えません。
側壁誘導や右側胸部誘導まで加えると、かなり明瞭です。
でも、精密に読み込み、比較することよりも、12誘導心電図を見て、一発でACSダ!!循環器科をコールしよう。が大切なんです。
お師匠様からは、あんまり理屈っぽく心電図を解析していると体に悪いですよ、と云われました。
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