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Cardio2012のECGブログ-2019改

=上級医がやっている危ない心電図の見分け方= ECGにまつわる基本的な諸問題:総合診療部研修医と、ECG苦手医師のためのサイトです。

ECG-277:answer

ECG-277answer

   

    WQRSTの鑑別診断です。

    (WQRST : Wide QRS Tachycardia)

 「胸やお腹が、気持ちが悪い」と、云われています。意識は清明です。80代の男性です。頻脈です。 頻脈です。(pulse=164bpm.)

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  正しい手順に沿って、考えれる不整脈の鑑別となりますが、ここは私の思考過程に沿った解説をまずします。

【 VTか、否か 】

  WQRSTで、まず除外すべきはVTですね。

  意識がある・脈は触れる (= not pluseless-VT)ので、少し考える時間があります。除細動器を、患者ストレッチャー脇において、考えてます。

   VTにしては、この心電図切迫感がない。なんかキレイに整った波形です。

  RR間隔は揃っており、波形も安定しているので、psuedo-VTなし。

 

【 只の脚ブロック:CRBBBか 】 

  となると、もともと脚ブロック(この症例は、CRBBB)を持った患者の頻拍かもしれない。(今回、残念ながら、以前の心電図がありません)

  とすれば、上室性頻拍からの鑑別です。

【 Rapid Afib.か 】

  RR間隔は、きれいに揃っています。発作性心房細動(Paf)は、頻拍時は一見RR間隔が、揃って見えます。

  長めの心電図記録で、RRの不正の有無を、しっかりと確認しましょう。(初期研修医が、PSVGTです!と持ってくる narrow QRS tachycardia 心電図の4枚に1枚は、rapid-Afib.です)

  この症例では、RR間隔は鉄板で安定しています。頻脈です。Afib.ではない。

 

【 洞性頻脈か 】

  洞調律では、年齢別最大予測心拍数と云う概念があります。

   年齢別予測最大心拍数=220-年齢    (80才代ならば、140bpm以下)

     〔 上記の式は経験則で、高齢者では高値に出やすい欠点あり 〕

 この症例は、ちょっと心拍数速すぎます。洞性頻脈で、説明出来ません。

【 PATか 】

  一番、考えやすいです。CRBBBの上室性頻脈。

  よくみると、ST部分にP`としか思えない所見あり。逆行性P波です()。

 

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・・・・・・本当は、P`あるから、CRBBBのPATだね、と瞬間的判断でした。・・・・・・・

    わかんない時は、上記の様に思考が進む(はずです)。

 さて、ST上昇でACSを心配したとは、どういう事でしょうか?

 III 誘導あたり()が、心配だったようです。よく見てましょう。

 

 III 誘導のST上昇と勘違い部分は、実はQRS後半部分なんです。云われてみると、こんなに短いST部分ってないよね、と理解出来ます。

   ST上昇!!と思い込んでしまうと、なかなか初学者は修正できません。でも、一回経験すると、その後は大丈夫なようです。

  なお、部分をP`と思うかもしれませんが、これもCRBBBのrSR`のr部分です。勘違いされないように。

   ST-T部分には、notchは出現しません。ST-T部分にあるデコボコは、ノイズがP`(またはflutter波)を考えましょう。

  この症例は、ATPの静注で、瞬間的に洞調律に復帰しました。リエントリー回路が遮断されて、洞調律に復帰出来たんですね。

  もしAFLならば、ATPが効果している数十秒間は、徐脈化してノコギリ波が顕著となり、診断可能となります。(治療には、なりませんが。。)

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  血圧低下を伴うPATであり、カテーテルアブレーションも視野に入れました。

  今回の教訓です。

【 WQRSTは、VTをまず考える 】

【 VTで無ければ、脚ブロックの上室性頻拍を考慮 】

【 Wide-QRSは、ST上昇と混乱しないでね 】

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