ECG-143:51才女性。呼吸苦と著名な浮腫でER搬入の症例でした。
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高血圧・糖尿病を、以前より指摘されるも、放置してきた方でした。
リスクをいくら説明しても、理解されない方がいますが、私だって(動脈硬化のリスク)と云う概念は、医師になってだいぶ立ってから、身に沁みてきました。
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この症例は、急性心筋梗塞を半年前に起こしています。
この年齢で女性が心筋梗塞になるのは、よほどのリスクが重なってのことです。
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前下行枝が起始部近くで閉塞した症例でした。
心エコーを見ると、左室はすでにリモデリングしており、左室腔拡大と壁運動低下が著明です。心室中隔は、梗塞ですでに菲薄化しています。通常後壁は、代償性に過剰運動するべきなのですが、疲れ切っており(=リモデリング)、hypokinesisです。
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この方の12誘導心電図は、V1-6まで、基本はQS patternです。
それに、小さなR波が乗っていると考えてみて下さい。
広範な心筋壊死が、QS patternを形作っていますが、わずかに残存している心筋が、小さな r 波となって残っている訳です。
これを、杓子定規に、rS patternで虚血ではない、と判断するとおかしなことになります。心電図だけで、議論しないで、エコーを当てれば、すぐこれが答えとわかります。
なお、I, aVL 誘導にも異常Q波が存在していますね。
まともなQRS波形は、下壁だけとなっています。
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慣れれば、これが広範囲前壁の虚血を表す心電図だと、瞬時に認識できます。
心電図のロジックを懸命に覚えている段階で、一時的によくわからなくなる、心電図の一例だと思います。
rSなのに、これはQSが基本だ! なんて、云われるわけですから( ̄へ ̄|||) 。
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