循環器看護師の方々への症例解説です。
心電図理解が、中心です。(ECGブログですから)
この症例の心電図経時的変化を示します。
ERの心電図では、II,III,aVFでST低下ありますが、PCI直後より、基線にほぼ戻りました。
I 誘導、aVLは、ERで僅かにST上昇ありが、X+7dayでは基線に戻ってわずかに陰性T波出現となっています。
全体がLow voltageなのは、あんまり気にしておりません。胸部誘導に限局した低電位は、(垂直面の)電気軸の関係によるだけで、危機的状況を意味しないことが、多いんです。
ERの胸部誘導は、誰が見てもACS急性期の心電図変化です。但し、昨日前発症か・さっき発症なのか、迷うことはあります。
PCI直後でSTの上昇具合が穏やかになりました。PCI成功を感じさせます。けれど、QS patternはV1-4に拡がりました。
X+7 dayでは、軽度のST上昇と陰性T波出現となっており、典型的な(前壁の)急性心筋梗塞の経時的変化を呈しています。よく見ると、V4にr波が回復しています。心筋障害領域が、血流改善により起電力が改善した可能性があります。(電極貼付部位の微妙なずれで、これくらいの変化は生じるので、ICUでは胸部電極貼付部位のマーキングが行われていますよね。)
胸部誘導で、ST上昇は残り続けています。これは障害電流の継続の表れであり、心室瘤の可能性を示唆します。
ICU(CCU)管理中の合併症は、
*再梗塞(PCI部位の急性期閉塞)
*不整脈発作(VT,Vf,Pafなど)
*心不全増悪
*肺炎・消化管出血(ストレス性)
◎心破裂
◎乳頭筋不全・断裂によるMR/心原性ショック
◎心室中隔穿孔(VSP:ventricular septal perforation)
まだ、ありますね。
この中で、VSPは最初小さな収縮期雑音から始まり、堤防が決壊したように、どんどん心雑音が大きくなります。うっ血性心不全の急性増悪・心原性ショックの発生です。
☆申し送り時に、心雑音(特に心尖部)の有無・大きさを確認しておく。
☆新規心雑音の出現に対しては、すぐに医師へ伝達する。数時間でショックに移行することあり。(早く来なさい!!)との上申でいいんですよ。
Door to Balloon timeは、45分でした。
ER→PCI直後で、トロポニン値・CPK値が著増しています。急性心筋梗塞の発症数時間以内に、PCIが行われたことが分かります。
*PCIに成功すると、トロポニン・CPK値は急増して、かつ減衰も早い。
*心筋障害で肝障害ではないので、AST(GOT)>ALT(GPT)
のパターンを示します。CPK,トロポニンの測定がなくても、この差から何らかの筋肉障害かも?と想像は拡がります。
◎低カリウム血症は、ACS時の不整脈(VT/Vf)発生のリスクになるので、補正を心掛けます。
さて、心電図・血液検査結果を中心に、広範囲前壁梗塞のICUでの評価を、ご説明しました。
でも、緊迫感少ないですよね。実感として、急性心筋梗塞を捉えられない。
次回は、冠動脈造影(PCI)・心エコー・心筋シンチで、この症例をイメージします。