=(番外編)のコラムは、心電図周辺の循環器用語を解説します=
***地獄への道は善意で敷き詰められている(The road to hell is paved with good intentions)***サミュエル・ジョンソン。別人の説もあり。
CAST studyは、EBMのお手本のような論文です。
多くの循環器医にとっては、トラウマ(悪夢)となった研究です。
その教訓は、
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*虚血性心疾患の合併した心室性不整脈を、抗不整脈薬で治療すると、死亡者が増えてしまう。
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と云う、シンプルなものでした。皆さん、結果はよくご存じかと思います。
この研究以後、ただ不整脈がそこにあると云う理由で、抗不整脈薬を投与するのは、ナンセンス!ということが、常識となりました。
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急性心筋梗塞後に、PVC(心室性期外収縮)が多発した症例では、不整脈死が多い事が、当時わかっていました。
⇒nejm 1977; 297:750-7
そこで、CAPS研究で、encainide,flecainide,moricizineで、心筋梗塞後のPVCが減ることが、確認されていました。
⇒Am J Cardiol 1986; 61:501-9
だったら、急性心筋梗塞でPVCの多発する症例で、上記の抗不整脈薬でPVCを減らせば、不整脈死も減るはずだ、との仮説が打ち立てられました。
患者さんを守るために、ぜひその成果を証明したい!
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で、組まれたのが
CAST study:The Cardiac Arrhythmia Suppression Trial
=MORTALITY AND MORBIDITY IN PATIENTS RECEIVING ENCAINIDE,FLECAINIDE,OR PLACEBO=
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図にありますように、抗不整脈薬を使った群で、死亡数が明らかに増えてしまいました。当然、試験は中途で終了となりました。
以後、不整脈が見つかったから、とりあえず抗不整脈薬投与と云う、牧歌的治療はダメ!となりました。
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【Do Not Harm】
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が、原則です。その薬剤で治療することが、明らかに患者の利益となる場合のみ、投与が許されるのです。
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さて、この研究の限定点を理解しましょう。