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Cardio2012のECGブログ-2019改

=上級医がやっている危ない心電図の見分け方= ECGにまつわる基本的な諸問題:総合診療部研修医と、ECG苦手医師のためのサイトです。

【コラム-055】(番外編)CAST studyの教訓

=(番外編)のコラムは、心電図周辺の循環器用語を解説します=


***地獄への道は善意で敷き詰められている(The road to hell is paved with good intentions)***サミュエル・ジョンソン。別人の説もあり。


 CAST studyは、EBMのお手本のような論文です。

多くの循環器医にとっては、トラウマ(悪夢)となった研究です。

その教訓は、

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*虚血性心疾患の合併した心室不整脈を、抗不整脈薬で治療すると、死亡者が増えてしまう。

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と云う、シンプルなものでした。皆さん、結果はよくご存じかと思います。

 この研究以後、ただ不整脈がそこにあると云う理由で、抗不整脈薬を投与するのは、ナンセンス!ということが、常識となりました。

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 急性心筋梗塞後に、PVC(心室性期外収縮)が多発した症例では、不整脈死が多い事が、当時わかっていました。

⇒nejm 1977; 297:750-7

 そこで、CAPS研究で、encainide,flecainide,moricizineで、心筋梗塞後のPVCが減ることが、確認されていました。

⇒Am J Cardiol 1986; 61:501-9

 だったら、急性心筋梗塞でPVCの多発する症例で、上記の抗不整脈薬でPVCを減らせば、不整脈死も減るはずだ、との仮説が打ち立てられました。

患者さんを守るために、ぜひその成果を証明したい!

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 で、組まれたのが

CAST study:The Cardiac Arrhythmia Suppression Trial

=MORTALITY AND MORBIDITY IN PATIENTS RECEIVING ENCAINIDE,FLECAINIDE,OR PLACEBO=

nejm 324:781-788. 1991

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 図にありますように、抗不整脈薬を使った群で、死亡数が明らかに増えてしまいました。当然、試験は中途で終了となりました。

 以後、不整脈が見つかったから、とりあえず抗不整脈薬投与と云う、牧歌的治療はダメ!となりました。

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【Do Not Harm】

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 が、原則です。その薬剤で治療することが、明らかに患者の利益となる場合のみ、投与が許されるのです。

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 さて、この研究の限定点を理解しましょう。

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Cast1

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Castlimitation

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よかれと思って行った治療が、患者を害することとなる。大変な衝撃でした。以後、より精度高く・効果的な抗不整脈薬による致死的不整脈治療は、試行錯誤します。

 そして、ICD等のdeviceの発達で、その協力者としての地位が定まってきました。これは、また別の長いお話しです。

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** CAST studyは、nejmに 1989版と1991版の二つが載っています。 **

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