昭和末期に、医師になりました。 当時は、心エコーも心カテも、極めて限られた施設だけで、行われていました。PCIも、カラードプラ心エコーも、ありませんでした。
心疾患の診断に、普通に使えたのは、
◎ 聴診能力 と 心音図・心機図
◎ 胸部レントゲン
◎ 心電図
だけだったのです。
聴診は、アートであり、職人芸でした。(聴診十年、とも云われました)
胸部レントゲンは、前後・側面に、左右の斜位を撮影していました。(心臓の形を、知るためです)
なお、CTは頭部のみで、一症例30分撮影に要していました。
こういう時代に、心電図は、とても偉大だったのです。
どんな田舎の病院でも、保証された品質のdataが、得られたのですから。
そこから、できるだけの情報を得ようと、していました。
心エコーもCTも、ろくにない時代に、それは、妄想も含んでいました。
ST部分が直線化し、T波も平坦化したら、中年以上では、「冠硬化症」などと云うもっともらしい診断名が、付けられたりしました。
全医学生が、Dubinの心電図テキストを、洋書か和書かを問わず、持っていました。他になかったのです。(と私の記憶では、なっています)
やがて、心エコーで、心肥大も心拡大も、心筋壊死も、弁膜症も、心奇形もわかる時代となります。CTが、冠動脈まで描出してくれます。
EBMの波は、もちろん心電図の世界にも、波及しました。
虚血心でのQ波=貫壁性心筋壊死も、MRI等の解析で、単に心筋壊死の量の問題で、貫壁性か否かは、問題でないことが、わかりました。
発作性心房細動患者の動悸は、Holter-ECG解析で、単にSVPC多発の時に感じている場合もあることが、わかっています。
心電図に、全人的(?)能力を求める時代は、とっくに終わりました。他で得られる情報は、そこで得られれば良い。世界中のevidenceは、いつでも書籍・ネットで得られます。
でも、簡便で安全で経験の多い心電図は、こちらが問いかけると、実にいろんなヒントを、私たちに与えてくれます。
その声を、聞き取るのに、このブログが少しでもお役に立てば、うれしいです。
よいお年を。 2014/12/31
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