循環器看護師の方々への症例解説です。
心電図理解が、中心です。(ECGブログですから)
Heavy-smokerの40代男性が、激烈な胸痛でERに来院しました。
(何を考えますか?)
大動脈解離(Aortic Dissection)
肺塞栓(PE)
理学的所見のみで、これらの鑑別は難しい。
(参考になる理学的所見はあります。でも確定はちょっと。。)
*血圧の左右差・異常な高血圧・痛みの移動 (大動脈解離)
*呼吸音の左右差・患側胸部の膨隆 (肺塞栓)
リスクファクターの喫煙は、どれでも起こしそうで、鑑別にならない。
すぐに行うべき検査は、
12誘導心電図 (10分以内に記録すべし!)
→急性冠症候群ガイドライン(2018 年改訂版) p-21
http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2018_kimura.pdf
これでACSと断定できなければ、心エコー、心筋酵素(トロポニン/CPK)評価となる。(詳細な病歴は、当たり前)
他を鑑別するために、単純&造影胸腹部CTも必要となる可能性大。
でも12誘導心電図で今回は、ほぼ確定診断とします。
V1-5、I 誘導、aVLでのST上昇があり、広範囲な前壁の急性心筋梗塞であることは、確かです。
II,III,aVFでのST低下は、ミラーイメージです。(右冠動脈は、intactなハズです。)
いつ起きたのか?(この心電図で、発症24時間後もあり得ます)
突然の胸痛発作出現時を、とりあえず発症時間としましょう。この心電図と症状では、様子を見るという選択枝はありません。 自院 or 他院を問わず、PCI施行出来る施設での対応が急がれます。
V1のST上昇は、(タコツボ心筋症)を否定します。心尖部にタコツボパターンができる(=もっとも多い)症例では、心基部誘導(V1)が変化しないのが特徴です。(タコツボ心筋症)の除外診断に役立ちます。
留意すべきは、大動脈解離→左冠動脈閉塞の出現例があり得ることです。(右冠動脈閉塞合併が、一番多いのですが)
バルサルバ洞~上行大動脈を注視したエコー検査が必要です。おかしいと思ったら、単純&造影胸腹部CTを行います。(但し、Door to Balloon time遅れるし、造影剤の量も増えてしまいます)
広範囲前壁梗塞ですので、心機能の著しい低下が起きても不思議はありません。
*BiPAP、IABP、PCPSもあるかもしれません。
経時的心電図変化を考える。
血液検査結果が、心カテ室入室前に出ました。その後の変化もあります。
それらの判定は、次回です。