100才代女性です。
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この症例は、本来ならば一時ペーシング→永久ペースメーカーとなる症例です。 しんどい治療は、もう望んでおりません。超高齢・重度認知症があり、緩和医療のみとなりました。
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完全房室ブロック・徐脈の自然経過の観察です。
うっ血による呼吸苦に対しては、利尿剤を適宜使用して、対応しました。一番良い治療が、AV-pacing施行なのは、論を待たないんですけどね。
ER心電図の解説図です。
クリックすると、ECGが拡大します。
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グレーのラインは、RR間隔が整っている事を、示しています。
ピンクは、PP間隔が整っている事を、示しています。
房室伝導に、なんら規則性がない!ことが分かります。つまり、完全房室ブロックなんです。これは、けっこう長めの記録を行わないと、理解できないんです。自信を持って診断出来るだけの長めの12誘導心電図記録を、技師さんお願いしましょう。
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第7病日は、VT(TdP)まで、出現しました。
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徐脈は、VTを誘発します。典型的なTdPです。
(TdP : torsades de pointes)
ペーシングで心拍数を増やすと、たいてい抑止できます。 なお、この状況での低カリウム血症は、ありませんでした。
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明らかなQT延長を、示しています。
QT延長は、見ただけで分かるケースが、危ないんです。いちいち測定しなくてもわかるQT延長です。
また、2:1 Mobitz II 型のAVブロックとなっているようです。CAVBよりは、改善?したのでしょうか。▼は、P波を示します。
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11病日の心電図です。
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房室伝導が、回復しています。
洞調律で、60bpmとなりました。VTは、消失しています。QT延長も、改善傾向です。
この間、心筋トロポニン値の上昇はありませんでした。
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完全房室ブロックで、徐脈・心不全を呈した場合、AV sequential pacing を行うのが基本です。
今回は、CAVBの自然経過を観察することになりました。私も、自然に治ってしまうとは、予想外でした。再度、CAVBになるリスクは、もちろんあります。
貴重な経験を、今回シェアさせて頂きました。
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