以前Wenckebach AV blockに関して、きっちりとまとめておりました。そうだったんだ・・と自分で感心してしまうくらい忘れておりました。
Holter-ECGで、Wenckebach AV blockに出会っても、症状が無ければ、普通スルーします。
アスリート系の方では安静・夜間によくありますし、高齢者でもよく見かけます。何も起きなければ、何もしない。
特に夜間のそれは副交感神経支配の産物に過ぎず、交感神経が活性化すれば、すぐに伝導は回復します・・のはずでした。
(X day 11:29)の心電図は、一度房室ブロックです。
(X day 11:30)の心電図は、Wenckebach AV blockです。
Narrow-QRSで、特に問題なしの12誘導心電図です。
スルーが普通なのですが、今回は失神とけいれんです。頭部CTに問題が無くても、初回のてんかん発作は否定出来ません。異型狭心症による心室頻拍もあり得ます。
迷走神経過緊張による失神でも、けいれんまで至ることはありますが、とにかく入院精査としました。虫の知らせを、コンサルトされた循環器内科医師は、感じたんです。
入院時にHolter-ECGが取り付けられました。その解析です。
Wenckebach AV blockですね。最初は、この繰り返しです。Holter-ECGを取り付けたのは14時頃です。
ところが、深夜になると、
2:1房室ブロックとなりました。
Wenckebach AV blockからの延長と考えて良いならば、AH blockによる2:1房室ブロックとなるのですが。。
この2:1のAV blockは、AH-blockによる房室ブロックか、HV-blockによる房室ブロックか、EPSをしてないので確定は出来ません。流れとしては、AH-blockっぽいですけど。
さらに深夜というか、早朝に、徐脈が頻発しました。
心室応答がなかなかありません。
もう、ブロック部位がどこかは問題で無くなりました。経静脈一時ペーシングを開始しました。
こういう時に鑑別すべきは、
*とにかくACS (この後、壁運動障害も心筋酵素上昇もなし)
*電解質異常 (ERで、正常であることは確認済み)
*徐脈を助長する薬剤投与(点眼薬を含め、除外できました)
*二次性心筋症 (心肥大も壁菲薄化もなし。ほぼ正常心エコー像)
よって、primary conduction disorder(刺激伝導系がポンコツになって、かつ心室応答性が凹んでいる)と判定し、永久ペースメーカー植込みを行っております。
いつもはお咎めなしのWenckebach AV blockでも、このような展開があり得るんだな~、と学びがありました。症状を伴う心電図異常は、経過観察が重要となります。経時的因子を含むので、心電図試験には、ちょっと馴染まないのかね〜。
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