重度の肺塞栓でした。
「そうだよね、他は考えられないよね。」
と云う声が聞こえそうです。
更に理学的所見を追加すると
*右足部・下腿から大腿部までが発赤/腫張しており、本人は痛風と思っていたようです(家族談)
ERの胸部レントゲンは、右下肺野の血管陰影が消失しています。右肺動脈閉塞によるものです。必ず教科書的知識として出てきますが、これだけクリアに分かるのは、久しぶりです。広範囲ですから、ヤバイ!と感じること出来ますね。
では、ER心電図の解釈です。色々鑑別ありそうですが、
*洞性頻脈+CRBBB (←P波無し)
*ACS ( aVRとV1のST上昇か、PEA後の変化か)
*VT
*心房細動+CRBBB
など出てくるでしょうか?
VTとして考えると、
◎wide QRS tachycardiaである
◎V6で、r<Rパターンとなっている部分が気になりますね。
でも、、
*RR間隔が不整である。 P波がない。
*QRSはは、温和しくVTイメージを感じにくい。
*素直に、心房細動+CRBBBと考えた方が理解しやすい。
心房細動+CRBBBとして考えると
◎RR間隔が不整+P波がない → 確かに心房細動。
◎4ヶ月前になかったCRBBBの出現で、かなりwide QRSである。
◎CRBBBとしても右軸偏位が強すぎる。CWRも強い。
◎なんらかの急性右心負担が出現している、と考えると納得出来る。
◎CRBBB出現もあ、りS1Q3T3は出番なし。
重度の急性肺塞栓で、PEAから一旦離脱するも、心房細動+CRBBBの心電図パターンとなり、急性右心負荷(右軸偏位・CWR・頻脈)を呈した。
と解釈しました。
(結果が分かった後の解釈は、実にスマートにできるんです)
ERで施行し造影胸部CTです。
右肺動脈内に大きな血栓が詰まっています。胸部単純レントゲンで、右下肺野の血管陰影が乏しいのも理解出来ます。
まとめます。
右下肢の腫張を放置していた患者の突然のPEA搬入。
*ショック+右下肢の腫張。
*ERのfast-echoで、右心系の極端な負荷確認。
*造影胸部CTでの右肺動脈内血栓の確認。
で、急性の重症肺塞栓による病態と確定診断。
この流れで、12誘導心電図くんの出番はありません。無くても診断には困りません。
でも、「だから、私は肺塞栓だよって、最初から云ってるじゃありませんか。ちゃんと話を聞いて下さいよ」と、12誘導心電図くんは、語りかけていたんですね。