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Cardio2012のECGブログ-2019改

=上級医がやっている危ない心電図の見分け方= ECGにまつわる基本的な諸問題:総合診療部研修医と、ECG苦手医師のためのサイトです。

【ECG-320】:answer

重度の肺塞栓でした。

「そうだよね、他は考えられないよね。」

と云う声が聞こえそうです。

 

更に理学的所見を追加すると

*右足部・下腿から大腿部までが発赤/腫張しており、本人は痛風と思っていたようです(家族談)

 

ERの胸部レントゲンは、右下肺野の血管陰影が消失しています。右肺動脈閉塞によるものです。必ず教科書的知識として出てきますが、これだけクリアに分かるのは、久しぶりです。広範囲ですから、ヤバイ!と感じること出来ますね。 

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では、ER心電図の解釈です。色々鑑別ありそうですが、

*洞性頻脈+CRBBB   (←P波無し)

ACS          ( aVRとV1のST上昇か、PEA後の変化か)

*VT

*心房細動+CRBBB

など出てくるでしょうか?

 

 

VTとして考えると、

◎wide QRS tachycardiaである

◎V6で、r<Rパターンとなっている部分が気になりますね。

でも、、

*RR間隔が不整である。 P波がない。

*QRSはは、温和しくVTイメージを感じにくい。

*素直に、心房細動+CRBBBと考えた方が理解しやすい。

 

 

心房細動+CRBBBとして考えると

◎RR間隔が不整+P波がない → 確かに心房細動。

◎4ヶ月前になかったCRBBBの出現で、かなりwide QRSである。

◎CRBBBとしても右軸偏位が強すぎる。CWRも強い。

◎なんらかの急性右心負担が出現している、と考えると納得出来る。

◎CRBBB出現もあ、りS1Q3T3は出番なし。

 

 

重度の急性肺塞栓で、PEAから一旦離脱するも、心房細動+CRBBBの心電図パターンとなり、急性右心負荷(右軸偏位・CWR・頻脈)を呈した。

 

と解釈しました。

(結果が分かった後の解釈は、実にスマートにできるんです)

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ERで施行し造影胸部CTです。

右肺動脈内に大きな血栓が詰まっています。胸部単純レントゲンで、右下肺野の血管陰影が乏しいのも理解出来ます。 

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まとめます。

 

右下肢の腫張を放置していた患者の突然のPEA搬入。

*ショック+右下肢の腫張。

*ERのfast-echoで、右心系の極端な負荷確認。

*造影胸部CTでの右肺動脈内血栓の確認。

 

で、急性の重症肺塞栓による病態と確定診断。

 

この流れで、12誘導心電図くんの出番はありません。無くても診断には困りません。

 

でも、「だから、私は肺塞栓だよって、最初から云ってるじゃありませんか。ちゃんと話を聞いて下さいよ」と、12誘導心電図くんは、語りかけていたんですね。