twitterに連投したのを、手を入れてUpしてみました。
昔は、不整脈治療薬でもあったジゴキシン。いろいろと否定されて、今は心不全治療の底上げという裏方さんです。
【 いまどきのジゴキシン-01 】
ジギタリスのさじ加減が出来るようになってこそ、一人前の内科医@昭和。これが完膚なきまでにEBMで否定されたのが、ジギタリスの臨床応用の歴史でした。
医師の全知全能(とevidence)を駆使して使うワルファリンとは、対象的ですね。
【 いまどきのジゴキシン-02 】
ジギタリスは美しい花を咲かせます。我が家でもツレが、ガーデニングで植えておりました。
時々、アウトドアで野草の天ぷらに使い、徐脈・意識障害のトラブルが起きるようです。
花言葉は、[不誠実]・[不真面目] (-_-;*)。
【 いまどきのジゴキシン-03 】
昭和の終わる頃(1989年まで)の心不全治療薬は、現実的には利尿剤とジギタリスだけでした。
亜硝酸剤は、飲み薬だけ。硝酸薬の点滴と塗り薬(=バゾレーター軟膏)が、市販され始めたばかり。ACE阻害薬は高血圧治療薬から心不全治療薬にやっと変わりつつありました。
【 いまどきのジゴキシン-04 】
(難治性心不全)の定義は、利尿薬・ジギタリス・ACE阻害薬でもコントロールできない症例の事でした。昭和の時代は、まだジゴキシンがルーチン的投与でされていました。
【 いまどきのジゴキシン-05 】
ジギタリス製剤には、
* ジゴキシン(腎代謝性、bioavailabilityは個人差大)
*メチルジゴキシン(ジゴキシンにメチル基つけてbioavailability高い)
と云う事で、以降はジゴキシンの表記のみとします。これ以外、ほぼ使ってないので。
【 いまどきのジゴキシン-06 】
ジゴキシン錠は、0.125mgがほとんど。(一応0.25mg錠もあります)。現在の中心用量は、0.125mgです。
ジゴシン注は0.25mg。ジゴキシンの注射剤です。
0.125mg錠発売時は、(ハーフジゴキシン)と云う商品名でした。
この量が中心用量となって、ジゴキシン中毒は、激減しました。
【 いまどきのジゴキシン-07 】
0.125mgがスタンダードな処方量となり、ジギタリス中毒は激減しました。あんまり使わなくなったし。中毒症状は、
*徐脈
*食思不振
*ふらつき
は、最低抑えましょう。
◎有名な黄視症は、まだ経験しておりません。(きっと会えない)
【 いまどきのジゴキシン-08 】
内服・静注した後に、血中>組織の分布が6時間以上続きます。
通常は、朝の内服前のトラフ値で血中濃度を判定します。
一週間投与を続けた際の血中濃度変化です。
0.125mg/dayだと、血中濃度は1.0ng/mL以下に維持しやすい。
【 いまどきのジゴキシン-09 】
腎機能障害を持つ患者さんへの経口投与方法・・なんて、考えてはいけない!投与しないことです。
ジゴキシンなしでは対応出来ない!なんて病態はありませんのでリスクは取りません、ボクは。(否定型のてんこ盛り)
【 いまどきのジゴキシン-10 】
Radiance試験は、ジゴキシンを中止したら心不全悪化したという内容ですが、β-blockerが心不全治療に使われていなかった時代の研究です。
標準治療のレベルが上がった今では、参考にならない。
この研究は、ジギタリスの有用性でよく引用されますが、みなさん止めて心不全悪化した経験ありますか?私はないんです。。
【 いまどきのジゴキシン-11 】
ジゴキシンの(さじ加減)を、徹底的に否定したDIG study。
*洞調律でHFrEF症例の入院率を下げる。
*血中濃度1.0ng/mL未満のみ予後改善傾向。
*死亡率変わんない。
*女性は投与しないほうがいい??(substudy)
【 いまどきのジゴキシン-12 】
それまでは中毒症状が出ないように頑張りつつ、できるだけ血中濃度を2.0ng/mLするのが、(さじ加減)とされていました。
中心用量が、0.25mg→0.125mgへ、劇的に変わりました。
ERでdigitalis中毒をあんまり診なくなった理由です。
【 いまどきのジゴキシン-13 】
ここまでは、ジゴキシンの一般常識的お話し。
その後どうなったのかを追っかけるのは、けっこう大変です。
小田倉先生がご紹介されているBMJ(2015)の
ジゴキシンの安全性と効果に関する400万人年対象のシステマティックレビュー&メタ解析
が勉強になりますφ(..)。
https://dobashin.exblog.jp/21600728/
【 いまどきのジゴキシン-14 】
(心不全の再入院率)を減らすことが、どういう意味を持つのか?
*心不全の発作を起こす度に、心機能は低下し、生存率も低下します。観察期間中の死亡率は変化しなくても、QOLは低下していきます。発作自体を起こさないことが重要です。
【 いまどきのジゴキシン-15 】
ジゴキシン単独で心不全と勝負することは無いので、HFrEF症例で投与に問題がなければ、標準治療+ベーシックな投与を考える。で、良いんだと思っております。
【 いまどきのジゴキシン-16 】
ジゴキシンにPafの抑制効果はありません。発作出現時のレートコントロールも期待できません。なんせ血中濃度<1.0ng/mLで維持するんですから。
【 いまどきのジゴキシン-17 】
なお、慢性心房細動症例に投与すると、夜間の徐脈はよく経験します。副交感神経有意の世界では確かにレートが落ちます。寝てますので、RR間隔がHolter-ECG上多少延びても気にしません。
心房細動合併心不全での好適応は、僧帽弁狭窄症(MS)でした。今、MSを新規に診ることはできませんが。
【 いまどきのジゴキシン-18 】
CS1,2で来院した心房細動合併心不全ではジゴキシン静注はよい適応です。初回投与は、腎機能関係無しですね。One shotはだめ。緩徐静注で、お願いします。
但し、低カリウム血症・低アルブミン血症では、副作用でやすいので要注意です。
【 いまどきのジゴキシン-19 】
緩徐静注とは、3~5分かけて注入すること、と云う理解が常識的です。
ジゴキシン1A(0.25mg)+生食20cc で希釈して、末梢静脈から投与します。ゆっくりと、ゆっくりと。。(アダージョかレントで)
【 いまどきのジゴキシン-20 】
HFrEF with rapid-Afib.でCS1or2でER受診した患者にジゴキシンを投与下場合に、
*ジゴキシンで良くなったのか?
*ジゴキシン無しでも、安静・酸素投与・利尿剤静注・BiPAP
等で治ったのか?
よくわからない(・_・?)。
【 いまどきのジゴキシン-21 】
(これは私見ですが)
ジゴキシン投与中の患者が、なんか症状訴えたら、まずジギ中毒は否定しておく。
2.6ng/mL以上ならジギ中毒と決め付ける!
それ以下でも、中毒症状出ることあります。トラフ値です。
(1.0ng/mL未満なら、多分違う。。)
私の外来は、ジギタリス管理(20分で血中濃度が測定出来る)はできます。
しかし在宅管理や施設管理の場合、何か患者さんの不調を訴える度に(ジゴキシン中毒か!?)と悩むことになります。
心電図でも、ジギタリス効果(STの盆状降下)見なくなった気がします。低用量使用が普及した結果でしょうか。