V1で tall-R wave となる病態が、いくつかあります。
根底にある電気生理学的説明は、
- ◎V1誘導部位に、起電力が高い心筋がある。
- (=右室肥大 :RVHか、この部位の肥大型心筋症)
- ◎V1誘導部位に向かう興奮波がある。
の、どちらかです。
Case-C:WPW syndrome (A型)
左房-左室間に短絡路があります。ケント束です。
ここから右室方向に電位が流れます。V1に向かって来ます。よって、R型波形(Aの形)にV1はなります。なお、正常な伝導(ヒス・プルキンエ系)との融合波形となります。
Aの形をV1で見たら、他の誘導でデルタ波を探しましょう。
Case-D:CRBBBを伴うHCM(肥大型心筋症)
通常CRBBBでは、rsR`となります。
この症例ではRsR`で、R > R`です。
Rは左室の興奮。遅れたR`は右室の興奮です。
肥大型心筋症での心室基部の肥大=左室起電力増加です。
CRBBBと左軸変異もあり(=二枝ブロック)、混乱します。
HCMを、思いつけるかが鍵です。
Case-E:成人期に手術をしたPDA術後で肺高血圧症。
わかりやすい肺高血圧症の患者さんです。
*脚ブロックありません。
*明快な右軸偏位。
*尖ったP波。
*V1での高いR波。
*V5,6の狭くて深いS波。RVHのミラーイメージです。
容量負荷での右室肥大時は、内腔拡大を伴いますので移行帯はV6になっています。
Case-F:手術無しのファロー四徴症
なぜ手術してないのかは、今回スルーです。
*右脚ブロックないので、右軸に傾いているのは右心負荷で説明したい。
*P波は、当てにならない。
*V1-3のR波形とST-T変化は、やはり右室肥大で説明したい。
ファロー四徴症は、
◎大きなVSD(心室中隔欠損)
◎大動脈騎上(穴の開いた心室中隔の上に乗っている)
◎肺動脈狭窄
◎右室肥大(結果として)
ですね。
3例の先天性心疾患で右室肥大を起こした症例の心電図を提示しました。鑑別が必要なWPW-A型、HCM、単純なCRBBBの心電図と比較しました。
違いを味わって頂けたでしょうか?
最後に注意点。
【心電図で理解出来れば良いのは、右室肥大の心電図波形です】
【先天性心疾患の違いを心電図で当てっこするのは、お勧めできません。心エコーにお任せです。】
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