12誘導心電図は、いろんな方向から心臓を眺めて、それを総合的に判断する(総合画像診断)です.
今回は逆に、各々の誘導が、何を教えてくれるのかを、考えてみます. ..
【I 誘導について】
◎ aVL,V5.6 と伴に,側壁の誘導である.
側壁の心筋梗塞(Q波・冠性T波)や、著名な心肥大にて,変化を示す.
◎ I 誘導にまではっきりした肥大を示す場合
(I =V5・6),かなりの 肥大か,心筋症の可能性が強い.
◎ P,QRS,Tの陰転→左右の上肢の電極の付け間違い.
間違うときは、必ずと言って良いほど、左右の電極付け間違いである.
◎ CRBBBでは,+90までの軸偏位は正常である.
◎ 立位心(COPD)では,QRSが小さく+90くらいまでなり得る.
◎ MSでは,QRSが小さいことが多い.(R=S、Lead I sign)
【II 誘導について】
◎ 下壁の誘導である.
〇 下壁の中隔よりの部分を反映する。
〇 II誘導に異常Q波があると、虚血の可能性が一段と高くなる。
◎ 正常例では,主たる心起電力ベクトルと並行しているため,波形が大きい.
◎ P波のチュック用誘導(V1.2と伴に、P波が大きいから)
【III 誘導について】
◎ 下壁の誘導である.
◎ 主たる心起電力ベクトルと直交に近いため,QRSは陰転化しやすい.ちょっとしたベクトルの揺れで、容易に陰性となる.
◎ よって、III 誘導に限局するQ波は,正常範囲内とみなす.他の下壁誘導にも虚血性変化があった場合にのみ、それを考慮する.
【 aVRについて 】
1. 心内腔心電図である.
2. P・QRS・Tはすべて陰転している.
3. I 誘導様になる. Reversed arm attached.電極付け間違い!
4. late R’.RV outflow tract の voltage 反映.(rSR’)
5. 心内膜の虚血=STの上昇となる.(体表面ではST低下)
6. aVR=negative P&aVF=positive Pで正常洞結節調律とする。
→そんな保証は本当はないけれど、心房の上から下に興奮が伝わるので、
そう理解しましょう!と云うお約束です。
7.ご存じ、TMT病変でのST上昇。ほんのちょっぴりのこともあり、要注意です!
【 aVL について】
1. (高位)側壁の誘導である.
2. +60以上の場合,異常Q波の出現と理解できる.
3. aVR=aVL vertical heart. 電気的垂直位心.
4. I 誘導, V5.6 といっしょに変化しやすい. (まとめて見る習慣を!)
【 aVF 】
1. 下壁の誘導である.(with II,III 誘導)
2. I 誘導, II 誘導,aVF で大きいS波~左脚前枝ブロックの可能性あり.但し横位心でもLADとなりうる.(LAD≠左脚前枝ブロック)
3. advanced-LVHで必ずLADになるわけではない.
【 V1,2について 】
1. 右室の誘導である.と認識するべし.
2.SV1は,左室の興奮の表現である.(deep S=LVH)
3. 女性では,V1-3まで,なだらかなT陰転がありうる.(理由は不明?)
4. rSr'パタ-ンは,正常でもありうる.(すぐIRBBBとしない.)
5. V1でのR/S≧1の場合.
(normal variant もむろんあり得る.)
1)CRBBB(or IRBBB)
2)Posterior MI
3)HCM IVS.wallの肥大
4)右室負担(肺高血圧症・PS・ASD 他)
5)WPW症候群(SO CALLED type-A)
【V3,4について】つ
1. IVS周辺の誘導である.
2. 正常では,ここに移行帯がある.(R=Sとなる部分)
3. q波の出現は,そこから左室誘導になったことを意味する.
4. 通常V2・3にq波は存在しない.小さくてもMIを意味しやすい.
5. 心尖部MIではV3・4に限局したQ波出現し得る.
6. V2-4でのST低下(horizontal)は,後壁AMIのST上昇のミラ-イメ-ジ を意味する場合がある.胸痛(+)ならレッドフラッグです.
【V5,6について】
1. 左室自由壁(側壁)の誘導である.
2. 通常V5のR波が最も高く,RV5>RV6となるのが普通です. LVHが強いと水平
ベクトルが後方に回り込み,RV5<RV6となる.
3. 側壁の虚血では,I 誘導・aVLと共にST-Tが変化する.
4. V6≧2.0mVは,LVHを示唆する.
それぞれの誘導の持つ特徴も、覚えてといて下さいね。
赤く表示した部分が今回書き加えた内容です。
2020/11/4
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