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Cardio2012のECGブログ-2019改

=上級医がやっている危ない心電図の見分け方= ECGにまつわる基本的な諸問題:総合診療部研修医と、ECG苦手医師のためのサイトです。

ECG-134:answer

ECG-134:34才男性。突然の失神・呼吸苦でした。

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 臨床の場としては、ヒントが不十分ですよね。
 どんな患者さんか、わからなくて診療することは、ないのですから。
 34才の肥満体の男性です。喫煙者でもあります。
 突然の意識消失発作(朝、自販機でコーヒーを買った後に)でした。呼吸苦もあり、ER搬入となっていました。やや頻呼吸と、SpO2低下が目立ちました。意識は清明で、麻痺はありません。
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 ここまでで、鑑別疾患を考えて下さい。(心電図所見ありの状態で)
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 さて、搬入時の心電図です。
◎ 洞調律です。
◎ ほぼ100/min.と頻脈です。
◎ 少し、電気軸が下むきになっています。
  →立位心かもしれません。I 誘導のS波が深い。aVR=aVL パターン。
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 でも、肥満体の立位心なんて、あるのでしょうか?
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 胸部レントゲンを見てみましょう。

E134chestxp

クリックすると、拡大します。

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 立位心ではありませんね。肺野はキレイです。気胸なしです。

 もともとの心電図がないと、これだけ(軸偏位)で、異常とは云いきれません。

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 まとめてみましょう。

◯ 34才の喫煙・肥満の男性。

◯ 突然の失神と呼吸苦。SpO2の低下。

◯ 心電図で、頻脈と電気軸が下を向いている。(右心系に引っ張られている)

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 肺塞栓も、鑑別に入れなければなりませんね。

 肺塞栓のパールとして、

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【SpO2低下を説明する胸部レントゲン所見がない場合に、肺塞栓を外さない!】

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 があります。

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 二日目の心電図を見てみましょう。

E1340730521620130728pte2nddayt

クリックすると、ECGが拡大します。

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 V1-4のT波が陰転化しています。

 I 誘導のS波は、無くなってしまいました!?!

 III,aVFのT波陰転。

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 右心系の負荷の表現である、と推定することは可能です。

 但し、我々は最初は、タコツボ心筋症か!と思いました。

 でも、心エコーでは、心尖部の壁運動障害はなく、右心系の拡大もいまいちでした。

 このように、ERにおいて、心電図も心エコーも、あまり役に立たない肺塞栓の症例は、存在します。失神までしているので、循環動態はあぶない感じなんですけどね。

 この症例の胸部造影CTです。

E134ptecect

クリックすると、拡大します。

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胸部造影CTと肺血流シンチの比較です。

E134ctri

クリックすると、拡大します。

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 肺塞栓における心電図の意義は、大きくはありません。

 心電図が、明らかにおかしい症例は、血行動態の破綻を意味している可能性大です。慎重に対応しましょう。

 また、経時的に心電図を比較することは、大切な事です。

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