ECG-142:76才女性。大腿骨頚部骨折で入院し、心電図記録しました。
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なんの症状もないのに、広範囲にT波の陰転を記録しています。
心エコーでは、心尖部を中心とした心室瘤様の壁運動障害を示しました。
血液検査では、Max-Troponin I 値で、0.30でした。CPK上昇なし。
困ってしまいました。
壁運動障害のパターンで、虚血なのか?タコツボ心筋症なのか?鑑別するのは、現実的には困難です。
整形外科の手術を、一週間延ばして頂き、冠動脈造影をしました。予想したように、問題なし!でした。
心電図も、壁運動もすぐに改善しました。
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結論は、【骨折ストレスにより発症した たこつぼ心筋症】でした。
結果から云うと、見つけてしまったために、対応を必要としたたこつぼ心筋症です。一年後に、歩行で外来に来られたので、念のため、12誘導心電図を記録しましたが、下記のように、元気な心電図でした。
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クリックすると、ECGが拡大します。
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知らなければ、予定どうりに大腿頚部骨折の手術を行い、順調に経過したはず、の症例です。たぶん。
このように、我々が知らないうちに、たこつぼ心筋症が発生し、人知れず治癒することが、けっこう起きているはずなんですね。
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