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Cardio2012のECGブログ-2019改

=上級医がやっている危ない心電図の見分け方= ECGにまつわる基本的な諸問題:総合診療部研修医と、ECG苦手医師のためのサイトです。

ECG-337:answer (2/2)

 80才代の女性で、心室瘤形成・LCX/LADの二枝病変でした。前回LCXへのPCIを施行し、今回はX+5th. dayでのLADへのPCIです。 

 

 PCIは無事成功です。長めのSTENTを#6に留置しました。

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クリックすると、拡大します

 

 さて、同日に施行した12誘導心電図と心エコーです。

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クリックすると、心電図が拡大します

 

*V1のST-T変化が殆ど無く、V2-6で見事な陰性T波(Giant negative T)が出現しています。

*下壁を取り巻くように、II,III,aVFでも陰性T波です。

*前回お示ししたように、心筋酵素もあんまり上昇していません。

 

 

X+5th. dayの心エコーです。

 

 

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 心尖部壁運動は、著明に改善しています。

 

 X+1day と X+5 days では、次のような変化が生じました。(心エコーは、収縮期像です)

 

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クリックすると、心電図が拡大します

 

 ここで興味深いのは、

 

【 左室収縮性は十分改善しているのに、巨大陰性T波が発生している症例がある 】

 

 ことでした。

心電図の経時的変化を提示します。 

f:id:heart2019:20191007204730j:plain

クリックすると、心電図が拡大します



 

 

 さて、(私の脳内)discussionです。

 

 

そもそも、ER心電図で気付くべきではないか。

→そうですね。外傷が立て続けでERてんてこ舞いの中でまた(前額部)外傷で、心電図がスルーされているのは、確かなんです(-_-;*)。

 

 

この症例は、X+1dayの時点でたこつぼ心筋症として、バイタルに著変なければ、経過観察のみでよいのでは。

→思い込みで扱うと痛い目に遭うのが、たこつぼ心筋症です。虚血の除外に、冠動脈造影・冠動脈CTを施行するのは、理に適っています。

 

 

今回のPCIは、施行する必要が無かったのでは。

→まず、今回の壁運動障害と心電図変化が、二枝病変による虚血発作の結果か・たこつぼ心筋症によるのかが、議論となります。二枝病変と云うのが、やっかいなんです。一枝病変では説明出来ない。でも、二枝病変だと説明出来る気もする。狭いから拡げると云う脊椎反射ではないのです。

 

 

心エコーイメージと心電図イメージは、たこつぼ心筋症を一番考えやすいのでは。心筋酵素の経時的変化もわずかだし。

→振り返りで全てを見つめると、私もそう思えます。しかし、、この二枝病変を見て、そう割り切るのは=PCIを施行しない=なかなか困難だと考えます。

 

 

壁運動が改善しているのに、巨大陰性T波(GNT)が出現するのは。

→タコツボ心筋症でも、虚血発作でも、GNTが出現するのは24時間後くらいですね。けっこう長く続くGNTも¥あります。ここまで左室収縮能が改善しているのは、ビックリでした。

 

 

 たこつぼ心筋症に、偶然合併していたsilent ischemiaだったのでしょうか。いろいろと考えさせられる症例でした。