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Cardio2012のECGブログ-2019改

=上級医がやっている危ない心電図の見分け方= ECGにまつわる基本的な諸問題:総合診療部研修医と、ECG苦手医師のためのサイトです。

ECG-293:answer

 80才代女性の、嘔吐とめまい発作でした。

 経過を見ていたら、約半日で、ST-T変化が、明瞭になってしまいました。 

 まず、搬入時心電図を、再検討してみます。

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クリックすると、ECGが拡大します。

 

 V5,6及び、I・II , aVLで、ST低下を示しています。

  但し、以前の心電図が記録されてなく、狭心症発作かは、明瞭ではありません。

  めまいが主体で、さほど気にしなかったんです。

 入院後、13時間ほどして、再度の心電図で、ちょっとびっくりです。

 

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クリックすると、ECGが拡大します。

 V2-6及び、I , aVLで、ST上昇を示しています。

何かが起きていることは、確かになりました。

心エコーを行いました。

(左室長軸断層像)

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(心尖部からの左室長軸断層像)

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(心尖部・四腔断層像)

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(左室短軸像)

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  この時点で、前下行枝のACSを、強く疑いました。緊急の冠動脈造影を、施行しております。

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  予想に反して、回旋枝(#13)に、有意狭窄を認めました。

  IVUSは、施行出来ませんでした。

  ここを、targetにPCIが施行されております。

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クリックすると、拡大します。

  以後、静かに時間は過ぎて、患者さんも順調に回復しました。

  経時的な心筋酵素値の変動を、お示しします。

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クリックすると、拡大します。

 う~ん、微少な変動に留まっていますね。

 不安定狭心症で、済んでいたのか?

 一連の心電図変化を、経時的に表示します。

 

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クリックすると、ECGが拡大します。

  PCIは施行しましたが、最終的にこの症例が、ACSなのか?たこつぼ心筋症なのか?かなりの議論となりました。

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 LAD病変(おそらく#7レベル)の病変を予測していた。

 心エコーでの壁運動障害と併せて、準緊急心カテに持ち込んだ。

しかし、#13の病変であった。

PCI後のトロポニン、CPKの上昇は軽度であった。

 X+2dayにあるように、QT延長を伴った巨大陰性T波を、心尖部周辺に認めた。

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   これらを併せると、たこつぼ心筋症に、#13の有意狭窄をたまたま認め、それに対するPCIが施行されてしまった。。と考えるべきか、と推定しました。

   #13の病変が、不安定プラークだったのか、IVUSができれば良かったのですが、今回は施行出来ませんでした。

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  教訓の残る症例でした。

  事後カンファレンスでは、いろいろと思考出来ましたが、目の前のSTEMIと判断した症例の有機狭窄病変を、waitingは出来ませんでした。

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  対角枝や、鈍角枝は、胸部誘導の走行(V2-6)に沿って、走行していることがあります。そのために、さほど虚血領域が大きくないのに、広範な心電図変化を生じることがあります。

  さらに、free-wall左室を支配していますので、心破裂に繋がる事もあります。

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  いろいろと、考えさせられた症例でした。

  今回は、一言教訓は無しです。

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