【コラム-045】心電図で、心臓病の誤診や正診が、あるのでしょうか?
とても有名なお話しなので、ご存じの方が多いと思います。
東京大学神経内学の故・沖中重雄教授が退官されるときに、
【私の誤診率は、14%】
と云われ、みなをびっくりさせたそうです。
医療者以外は、そんなに偉い人が14%も誤診するのかと驚き
医療者は、たった14%しか誤診しなかったのか!と魂消た。
私の尊敬する 和田敬 先生は、自著(心電図から見る心臓病)の序文に、
「著者自身の力をためすために、同じ心電図を順序や日時を変えて3回にわたって判読した結果、100例中8例に全然違った診断が下された」
と述べられています。(1984年)
私にこんな優秀な結果は、とても出せません。このブログの心電図を見直しても、へ~そうなんだ、と自分で感心してしまうことがあります。
不整脈を除く心電図診断(←心臓病の)は、当時と比べて、そんなに進歩した訳ではありません。各種検査の進歩により、この心電図の意味は、そうだったのか、、的進歩があるだけです。
循環器病の診断能力は、各種検査を駆使することで、前進しています。でも、12誘導心電図だけで、確定診断となると、限界は今でもあります。
でも、それでいいんです。
【12誘導心電図のみでは、心臓病の確定診断はできない。正診も誤診もない。】
と、考えて下さい。
逆に云うと、他の検査がなかった頃でも12誘導心電図のみで、かなりの推定ができていた訳です。一部に妄想が入っていたとしても。
ST上昇を見たときに、
* ACS
* 早期脱分極
* 心肥大(LVH,HCM)
* 心外膜炎
* たこつぼ心筋症
* 肺塞栓
* 高カリウム血症
* Brugada症候群
* もしかして、大動脈解離
* ただの normal varient
* 原因不明。。
などの鑑別をあげられれば、心電図の役割は十分なんですね。
(もちろん、かなりの程度まで心電図だけでも、鑑別はできます。)
これ以上の精査は、心電図の経時的記録・心エコー、CT、CAGなどに委ねます。
もちろん、病歴と理学的所見が、優先ですけどね。
12誘導心電図の誤診を恐れない。そもそも、正診がないんですから。
鑑別診断があるだけです。その中に、正解があればいいんですね。
いつもと、同じお話しでした。
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