VTの12誘導心電図診断について
こうした診断の目安と目の前の心電図つき合わせてみると、「簡単ではない」ことに気づくだろう。12誘導心電図で「それなりの判別の考え方がある」ことを知っているだけでよい@村川裕二先生(循環器治療薬ファイル 第3版:p-115)
上記を前提とします。
けれども心電図検定試験のために12誘導心電図上のVT診断 Tipsを知りたい方のために、まとめてみました。
まず、BrugadaのVT診断アルゴリズムです。
変行伝導を伴った(脚ブロックを含む)PSVTとVTの鑑別です。「簡単でない」VTの診断の目安です。
https://www.ahajournals.org/doi/pdf/10.1161/01.CIR.83.5.1649
BrugadaのVT診断アルゴリズムの論文にfree accessできます。
【Tipsの一覧です】
【 taller left rabbit ear sign 】
RBBB型のVTでV1のRR`で、R>R`であればVTです。
V1は右室誘導です。CRBBBであれば、R<R`となるはずです。R>R`は、VTでないと発生しないんです。
【 LBBB型VTでは、V6にq/Q波があればVTです 】
LBBB型のVTでV1にq/Q波があれば、VTです。
なかなか見ないし、判断も難しそう。
(これ、理詰めで説明出来ない。。)
【 QRS>160ms.の頻脈は、VT可能性高まる 】
これだけではVT決めきれません。この症例では、QRSの形があまりに変です。(私の思う決め手です。)
【 Capture beat=(心室)補足収縮の存在はVT確定です 】
Capture beatは、房室解離の存在が前提ですね。
VT(心室頻拍)ですから、P rate<<V rateです。
P波が運良く房室結節を経て心室に伝導すると、心室補足収縮が発生します。VT確定です。
【 Fusion beat=(心室)融合収縮の存在は、VTかも 】
赤矢印が、fusion beatです。その後の2拍はP波があり、正常波形ですね。
正常伝導とVT波が、同時に起きて融合しています。
VT波形と正常波形の(間の波形)になります。
これがfusion beatだと分かるのは、その後に正常波形があるからです。fusion beat前のP波はよく分かんない(・_・?)。
【 WQRSTでのS波下降脚部のノッチはVT カモ 】
wide QRS tachycardia(WQRST)で、Sの最下端(nadir)のちょっと前(下降脚部)にノッチ(notch)があると、VT可能性が高まります。Josephson`s signと云います。
(なぜ、VTに特異的なのか、はっきりした説明が見つかりません)
なお、nadir後半のS並み上行脚部のnotchは、虚血心のVTであるようですが、Josephson`s signとは呼びません。
【 Brugada`s signは、VTを示唆する 】
WQRSTにおいて、R波開始部よりS波の最下点(nadir)までのが100ms以上あると、VTの可能性が高い。確定ではない。
こういうVT診断のTipsをいくら覚えても、VTを前にすると(あたま真っ白)になりますよね。沢山、VT心電図を見て下さい。できれば、きちんと解説できる方と仲良くして下さい。次回、VTシリーズ最終回です。
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佐々木達哉先生との共著が、2019/1/23に発刊されました。
医事新報社からです。
循環器版の(思考のレッスン)です。
村川裕二先生から、素敵な(推薦の辞)を頂きました。
まずは、立ち読みして下さい。私が援護射撃した佐々木ワールドが満開です。
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