Question-2の answer (ACSか、たこつぼか)
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さて、12誘導心電図です。あらあら、V2-6, I ,aVL誘導で、著明なST上昇が認められますね。どうしましょう。。
なお、心エコーでは、心尖部に巨大心室瘤を形成しており、心基部は逆に過剰運動(hyperkinetic motion)を、しておりました。
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ACSを考えるか、たこつぼ心筋症を考えるか。それとも・・・。
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冷静に状況を分析してみます。(血圧安定しているし、でも頻呼吸)
* 呼吸苦・発熱を発症と考えると、すでに半日経過している。
* 半日経過したACSにしては、ST上昇が急性期過ぎる、気がします。
* 心エコー所見は、たこつぼ心筋症も、十分に示唆する。
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12誘導心電図を、もう一度見てみます。
⭕️ V4-6は、幅広いQRSにも見えます。RR絶対性不正が、ポイント。
⭕️ V1-3を見ると、R波+ST上昇であることが、わかります。
* よって、心房細動+著明なST上昇を示している症例なんです。
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⭕️ aVRで、ST低下を認め、V1ではST変化ありません。
⭕️ これは、たこつぼ心筋症を、強く示唆する所見です。
* LAD-ACSでは、aVRのSTは上昇し、V1のSTも上昇する。
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心電図の経時的変化です。
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この症例は、
* 肺炎が発症→SIRSとなり、発熱・rapid-Afib.へ。
* このストレスで、たこつぼ心筋症となる。
* 心エコーで、心尖部の巨大心室瘤形成へ。
と云う、ストーリーでした。
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入院先の病院では、夜間・休日は対応困難で=診断が出来ない→当院転送となっていた訳です。静かな病院(=夜は検査ができない)での当直/夜勤を、経験されたことのある医師・看護師は、想像できますよね。
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血液検査の時系列表です。
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ショック状態からは、36時間ほどで離脱できました。心エコーでは、第三病日で左室収縮性もかなり改善しました。たこつぼ心筋症の早期回復パターンの典型です。但し、どれくらいで治るのか、いろいろです。
タコツボ心筋症に、特有の心電図所見に関しては、次の論文を参照されて下さい。
* Kosuge M. et al:Simple and accurate electrocardiographic criteria to differentiate takotubo cardiomyopathy from anterior acute myocardial infarction. J Am Coll Cardiol,55:2514-2516,2010
*小菅雅美:心筋虚血によるST,T波の変化とその特徴.レジデント 2014/3 Vol.7 No.3 p40-46
著者も、「この心電図所見は、タコツボ心筋症の2/3くらいの症例でしか示されないが、あると信頼度は高い」を説明されています。
aVRのST低下と、V1でのST変化がないのは、タコツボ心筋症・・かもしれません。
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aVRのお話しは、次のコラムで、もう一度させて下さい。
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