突然起きた胸部不快感と呼吸苦で、ER搬入でした。
急性期のたこつぼ心筋症は、ACSと同様にST上昇を示すことが多いのです。それも著明なST上昇がありえます。
もう一度、この症例のER心電図を示します。
たこつぼ心筋症でも十分に説明出来るような心電図です。(もちろん、ACSでないと分かるまで、ACSとして対応します。カテ室直行パターンです。)
たこつぼ心筋症を、巨大陰性T波(GNT)で覚えている方も多いと思います。まず覚えるべき所見は、GNTですね。
(GNT=Giant Negative T wave)
但し、GNTは亜急性期の所見なんです。
急性期のたこつぼ心筋症では、
*ACSと見紛うST上昇を起こす。
*V1でのST-T変化がない。(apical ballooning型)
*ミラーイメージとしてのaVRでのST低下
*気絶心筋としての異常Q波の出現(時に出現する)
となります。
心尖部を取り巻く誘導で変化が起きるのが、特徴です。
V2が心尖部を取り巻いてるの?と悩むかもしれませんが、ここまでご迷惑をかけること有るんです。
別症例:(たこつぼ心筋症)の経時的変化です。
肺炎で入院した患者ですが、翌日(X+1day)に典型的な(たこつぼ心筋症)急性の心電図となりました。実は入院日(X day)の心電図にあったQS patternは、気絶心筋のためだったようです。経時的に胸部誘導のR波が蘇っています。
今回の問題の症例として気になるのは、aVLでもST上昇があることです。
高位側壁を示すaVLは心基部よりです。V1が心基部・右室誘導であるように、心尖部での変化には反応が鈍いんです。
また、V1はSTが変化しているような、してないような微妙ですね。
緊急のPCI時の冠動脈造影所見です。
コントロール造影です。
*右冠動脈(RCA)は、やっと後室間溝に届く程度の弱い支配領域です。
*回旋枝は、主に後壁を支配しているようです。
*前下行枝が(RAO-18,CAU-27)では、なんか弱々しいですね。
アングルを変えると、Seg-7(#7)で完全閉塞しているのが分かります。大きな中隔枝を分岐した後なので、#7となります。
STENT留置後に、#7,8のLAD本幹は再疎通されていますが、対角枝は見えてきていません。D2かと思われます。
振り返りだからこそ、12誘導心電図の語りかけていたことが、解釈できるようになりました。ERで、そんなに悩むことではありません。カテ室に直行だ~!!
400症例目でした。
これからも、宜しく!