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Cardio2012のECGブログ-2019改

=上級医がやっている危ない心電図の見分け方= ECGにまつわる基本的な諸問題:総合診療部研修医と、ECG苦手医師のためのサイトです。

【ECG-400】answer(2/2)

突然起きた胸部不快感と呼吸苦で、ER搬入でした。

 

 

急性期のたこつぼ心筋症は、ACSと同様にST上昇を示すことが多いのです。それも著明なST上昇がありえます。

 

もう一度、この症例のER心電図を示します。

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たこつぼ心筋症でも十分に説明出来るような心電図です。(もちろん、ACSでないと分かるまで、ACSとして対応します。カテ室直行パターンです。)

 

たこつぼ心筋症を、巨大陰性T波(GNT)で覚えている方も多いと思います。まず覚えるべき所見は、GNTですね。

(GNT=Giant Negative T wave)

但し、GNTは亜急性期の所見なんです。

 

急性期のたこつぼ心筋症では、

 

ACSと見紛うST上昇を起こす。

*V1でのST-T変化がない。(apical ballooning型)

*ミラーイメージとしてのaVRでのST低下

*気絶心筋としての異常Q波の出現(時に出現する)

 

となります。

 

心尖部を取り巻く誘導で変化が起きるのが、特徴です。

 

V2が心尖部を取り巻いてるの?と悩むかもしれませんが、ここまでご迷惑をかけること有るんです。

 

別症例:(たこつぼ心筋症)の経時的変化です。

 

肺炎で入院した患者ですが、翌日(X+1day)に典型的な(たこつぼ心筋症)急性の心電図となりました。実は入院日(X day)の心電図にあったQS patternは、気絶心筋のためだったようです。経時的に胸部誘導のR波が蘇っています。

 

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今回の問題の症例として気になるのは、aVLでもST上昇があることです。

高位側壁を示すaVLは心基部よりです。V1が心基部・右室誘導であるように、心尖部での変化には反応が鈍いんです。

 

また、V1はSTが変化しているような、してないような微妙ですね。

 

 

緊急のPCI時の冠動脈造影所見です。

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コントロール造影です。

*右冠動脈(RCA)は、やっと後室間溝に届く程度の弱い支配領域です。

*回旋枝は、主に後壁を支配しているようです。

*前下行枝が(RAO-18,CAU-27)では、なんか弱々しいですね。

 

 

 

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アングルを変えると、Seg-7(#7)で完全閉塞しているのが分かります。大きな中隔枝を分岐した後なので、#7となります。

 

 

 

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STENT留置後に、#7,8のLAD本幹は再疎通されていますが、対角枝は見えてきていません。D2かと思われます。

 

振り返りだからこそ、12誘導心電図の語りかけていたことが、解釈できるようになりました。ERで、そんなに悩むことではありません。カテ室に直行だ~!!

 

400症例目でした。

これからも、宜しく!