80才代の男性で、CABG・PMI後の重度認知症でした。
一般的な肺炎・心不全の加療を行い、急変時の蘇生処置は差し控える(DNAR)の方針の患者さんでした。
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浅い呼吸となり、血圧測定不能となった時の病棟心電図モニターの波形でした。 今回の教訓は、
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【 ペーシング波形は、ショック時・呼吸停止時・心停止初期でも、モニターに反映されるので、安心材料には、なりません! 】
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と云うことです。
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これは、(ECG-150)で取り上げた症例と、同様のケースです。臨床症例は、繰り返します。すぐに、気付けることが、step-upです。
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この症例では、ペーシング波形に心筋が反応しない( QRS波形がでない )状態となるのに、呼吸停止・血圧測定不能・瞳孔散大後、数十分経過しております。
モニター波形上、明らかに(ヤバイ!)状態となってからでは、もう遅いんです。
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入院時の12誘導心電図です。AV-pacingで 60bpm の all-pacingです。
V1を見ると、心房もペーシングに反応しており、P波が形成されています。
V4,5で心室ペーシング・スパイクが明瞭です。もちろんQRS波形がこれにより形成されています。
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血圧が測定出来なくなり、呼吸も止まっていく過程でも、ペースメーカーは定められた心拍数を、健気に守り、心筋はそれに反応してQRS波形を作ります。ポンプとしては、すでに機能しなくなってもです。
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◎ am 2:56 60bpmでのペーシングです。自発波形が三つ入ってます。
Nは、自発波形。pは、ペーシングです。
モニター心電計も、自発とペーシングを区別します。
◎am10:56 頻脈で全てN=自発波形です。呼吸苦強い状況。
◎pm5:47 整脈ですが、自発波形です。
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◎ pm6:00 全てペーシング波形です。自発波形なし。
QRS幅が少し広くなっています。
◎ pm6:15 DCのモニターに付け替えています。
呼吸が止まり、脈もありませんが、QRS波形あります。
◎ pm6:50 QRSは無くなりました。ペーシングスパイクのみです。
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経時的ペースメーカー心電図波形の変化を、提示します。
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心臓のポンプ機能が停止しても、しばしの間ペーシングスパイクに反応して、QRSは形作られます。やはり、患者は見た目で判断して下さい。
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