* 20才代の男性です。
* 喫煙/肥満を含め、リスクファクターありません。仕事も穏やか。
12誘導心電図を、見るとほぼ全誘導で、 ST上昇を認めます。普通は、心外膜炎を考えて、安静/経過観察が一般的です。
でも、私たちは相当や悩みました。以下、取得したdataを列挙します。
(ER搬入時の心電図の再掲)
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(ER搬入日の経時的心電図変化)
*緊急の冠動脈造影は、am5時頃に施行しています。観察のみでした。
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(XdayからX+4dayまでの心電図変化)
*緩やかに心電図所見は、変化しました。
◎この間、胸痛発作の出現有りません。
◎病棟モニター心電図での無症候性ST上昇発作ありません。
◎CPK(max)=664 U/L X+1 day, トロポニン-I =15.75 ng/ml X day
◎ピロリン酸心筋シンチでの集積(Hot-spot)なし。
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(冠動脈造影 : intact study)
*造影剤が層流(laminar flow)で流れております。冠動脈解離ではありません。前後で撮影しても、著変ありません。狭窄性病変無し。
私の中で、ディベートが始まります。
この心電図は、心外膜炎なのか・心筋虚血なのか?
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【心外膜炎の立場】
*全誘導でST上昇してるし、これは心外膜炎でしょう。
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【心筋虚血の立場】
◎違うよ、aVL をみて、ST低下しているよ。II, III, aVF のST上昇のミラーイメージだよ。つまり、虚血発作だよ。
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【心外膜炎の立場】
*心筋虚血だとしたら、とんでもない広範囲梗塞だよね。心エコーでは、明瞭な壁運動障害有るはずだよ。(ありませんでした)
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【心筋虚血の立場】
◎PR部分をみてごらん。PR低下が心外膜炎の特徴だけど、これはないよね。反対にaVR のPR上昇もないんだ。話が合わない。
聴診を繰り返したけど、friction rubは聞こえなかったんだ。
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【心外膜炎の立場】
*ほんの一時期なんだ、friction rubは聞こえるのは。運がいい人だけだよ、これを聞けるのは。ちなみに、体位を変えて心のう液を変化させると、雑音音量は変化しやすいんだ。
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【心筋虚血の立場】
◎トロポニンI値が上昇しているよ。心外膜炎では、あり得ないよね。
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【心外膜炎の立場】
*純粋な心外膜炎なんて、有るんだろうか?炎症が心筋に及べば、上昇するでしょう。CPK-maxは、600U/Lだったんだろう。このST上昇の拡がりだったら、もっと高値を呈するでしょう。
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【心筋虚血の立場】
◎スパスムだったら、あり得るよ。ERでの心電図変化をみてごらん。
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う~ん、健全な討論と云うより、貶しあいみたいですね(-_-;*)。
まあ、私の脳内討論なので、お許し下さい。迷ったんです。
結論は出ておりません。
スパスムを否定はできず、ジルチアゼムを投与しながら、外来管理へ移行しております。
心外膜炎の心電図所見に関して、次のコラムでまとめています。
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