急性心外膜炎(acute pericarditis)の心電図所見を考えます。
【step-1】胸痛とのペアで、考える。当たり前ですが。
胸痛が無ければ、心外膜炎を考えないし、心電図も撮りませんよね。
胸痛の鑑別診断として、想起しますが、、。
* Friction rubは、滅多に聞こえません。心外膜炎の全stageで、ほんの一時期だけ、(聞こえる事がある)程度です。体位でも、音量変わります。
* 若い・リスクファクターがない・ストレスがない、などのACS/肺塞栓/大動脈解離の可能性が低いと、逆に心外膜炎じゃないか?と考え込みます。
* 心のう液貯留が、診断上は望まれますが、心のう液貯留=心外膜炎ではないので、限界有り。臨床的異議のない心のう液貯留もあるし。
* 痛みの位置はわりと限局していて、呼吸で疼痛が変動します。吸気時に痛みが強くなる。これがあると、真剣に心外膜炎を考え始める。
【step-2】全誘導でST上昇を示すと、心外膜炎を考える ?!?
医学生の頃は、そんな風に覚えていた方いませんか?私が研修医(30年前)の時は、そう思っていました、たぶん。
そもそも、全誘導でST上昇は出来ません。aVRでST低下を示すのも、心外膜炎心電図の所見です。
V1では、あんまりST上昇しないと云われております。
【step-3】なんとなくST上昇を示します。ボーとしてると、見逃すこと有り。
心電図のtextbookでは、典型例を探し出して載せています。実際は、このST上昇は心外膜炎だから、たぶん優位なんだよね、程度が多い。
【step-4】PRの低下が、最近の着目点!
炎症によって、心外膜面は持続刺激されています。この異常電流が、PR低下を産みます。心内膜面を見ているaVRでは逆にSTが上昇します。
この説明じゃ、理解出来ないですか?僕もよく分かりません(・_・?)。
【step-5】ST上昇は消え、PR変化も収まり、T波の陰転化がそれに続く。
発症直後に上昇していたSTと、PR変化は、しだいに治まります。数日の経過で、陰性T波が出現します。これが、教科書的展開です。そんなにうまく行かないことも多いんです。
【step-6】V6でのST上昇がT波の1/4以上だと、心外膜炎の可能性大。
かなり信頼性の高い指標なんです。
では、心外膜炎の実際の心電図を見てみましょう。間違いなく心外膜炎だと我々が確信している症例です。心電図だけでは??でもある症例です。
(胸痛での入院時の12誘導心電図です。60才代女性)
どこが異常か、すぐにおわかりになりましたか?
これを、心外膜炎の心電図だ!!と思って舐めるように眺めると、色々な気付きがあります。
(心外膜炎の心電図として、詳細に見てみる)
* V1、aVR以外は、僅かですがST上昇を示します。
* aVRでは僅かにST低下を示します。
* II 誘導、V6の例示で分かるように、PR低下しています。
* aVRではPR上昇しています。
どうでしょうか?
〔典型的な!〕心外膜炎の心電図に見えてきましたか??
このように、なんとなく心外膜炎的な、その気になって見ないと見逃しそうなのが、特徴です。困った特徴ですね。
Net上で心電図を探すと、すんごい変化を示した心外膜炎の一例が出てきますが、champion-dataだと思います。
【 胸痛患者で ACS等が否定的なときに、心外膜炎じゃないのかな?と思ってもう一度心電図を見直してみる 】
今回の教訓は、このようにまとめました。