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Cardio2012のECGブログ-2019改

=上級医がやっている危ない心電図の見分け方= ECGにまつわる基本的な諸問題:総合診療部研修医と、ECG苦手医師のためのサイトです。

コラム-081:急性心外膜炎の心電図所見を考えます。

  急性心外膜炎(acute pericarditis)の心電図所見を考えます。

 

【step-1】胸痛とのペアで、考える。当たり前ですが。

 胸痛が無ければ、心外膜炎を考えないし、心電図も撮りませんよね。

 胸痛の鑑別診断として、想起しますが、、。

* Friction rubは、滅多に聞こえません。心外膜炎の全stageで、ほんの一時期だけ、(聞こえる事がある)程度です。体位でも、音量変わります。

* 若い・リスクファクターがない・ストレスがない、などのACS/肺塞栓/大動脈解離の可能性が低いと、逆に心外膜炎じゃないか?と考え込みます。

* 心のう液貯留が、診断上は望まれますが、心のう液貯留=心外膜炎ではないので、限界有り。臨床的異議のない心のう液貯留もあるし。

* 痛みの位置はわりと限局していて、呼吸で疼痛が変動します。吸気時に痛みが強くなる。これがあると、真剣に心外膜炎を考え始める。

 

 

【step-2】全誘導でST上昇を示すと、心外膜炎を考える ?!?

 医学生の頃は、そんな風に覚えていた方いませんか?私が研修医(30年前)の時は、そう思っていました、たぶん。

 そもそも、全誘導でST上昇は出来ません。aVRでST低下を示すのも、心外膜炎心電図の所見です。

 V1では、あんまりST上昇しないと云われております。

 

 

【step-3】なんとなくST上昇を示します。ボーとしてると、見逃すこと有り。

 心電図のtextbookでは、典型例を探し出して載せています。実際は、このST上昇は心外膜炎だから、たぶん優位なんだよね、程度が多い。

 

 

【step-4】PRの低下が、最近の着目点!

 炎症によって、心外膜面は持続刺激されています。この異常電流が、PR低下を産みます。心内膜面を見ているaVRでは逆にSTが上昇します。

 この説明じゃ、理解出来ないですか?僕もよく分かりません(・_・?)。

 

 

【step-5】ST上昇は消え、PR変化も収まり、T波の陰転化がそれに続く。

 発症直後に上昇していたSTと、PR変化は、しだいに治まります。数日の経過で、陰性T波が出現します。これが、教科書的展開です。そんなにうまく行かないことも多いんです。

 

 

【step-6】V6でのST上昇がT波の1/4以上だと、心外膜炎の可能性大。

 かなり信頼性の高い指標なんです。

 

 

 では、心外膜炎の実際の心電図を見てみましょう。間違いなく心外膜炎だと我々が確信している症例です。心電図だけでは??でもある症例です。

 

 

 

 

 

 

(胸痛での入院時の12誘導心電図です。60才代女性)

 

08160pericarditis12web

 

 

 どこが異常か、すぐにおわかりになりましたか?

 これを、心外膜炎の心電図だ!!と思って舐めるように眺めると、色々な気付きがあります。

 

(心外膜炎の心電図として、詳細に見てみる)

 

081web

 

 

 

* V1、aVR以外は、僅かですがST上昇を示します。

aVRでは僅かにST低下を示します。

* II 誘導、V6の例示で分かるように、PR低下しています。

*  aVRではPR上昇しています。

 

 どうでしょうか?

 〔典型的な!〕心外膜炎の心電図に見えてきましたか??

 

 このように、なんとなく心外膜炎的な、その気になって見ないと見逃しそうなのが、特徴です。困った特徴ですね。

 Net上で心電図を探すと、すんごい変化を示した心外膜炎の一例が出てきますが、champion-dataだと思います。

 

【 胸痛患者で ACS等が否定的なときに、心外膜炎じゃないのかな?と思ってもう一度心電図を見直してみる 】

 

 今回の教訓は、このようにまとめました。