左冠動脈主幹部(LMT)病変です。緊急対応です。
*aVRのST上昇が、心電図診断の決め手です。
とは云っても、ピンと来ませんよね。
冠動脈は大きく3本です。
*前下行枝 (LAD : Left Anterior Descending artery)
*回旋枝 (LCX : Left Circumflex artery)
*右冠動脈 (RCA : Right Coronary artery)
(心電図検定問題では、略号・英語表記は使用されないようです。)
冠動脈の分布図は、
左冠動脈主幹部 ⊃ 前下行枝 + 回旋枝
なんです。
主幹部がクラッシュすると、2/3の心筋が動けなくなります。突然発症のショックになります。歩いて来ません。
病院までたどり着いた主幹部病変のACS患者さんは、発症初期に来院なので、心筋トロポニン値すら上昇していません。
LMT病変により広範囲に心筋障害が発生すると、心電図変化がハッキリしないことが、よくあります。前下行枝と回旋枝が、互いにマスクし合って、ST-T変化を牽制してしまいます。
II, III, aVF =右冠動脈支配領域のみ、ミラーイメージとしてのST低下が生じることが、よくあります。(RCA領域まで虚血では、病院にたどりつけません)
aVRは、心内腔を見る誘導[cavity lead]と呼ばれます。
*心内膜の広範な虚血の反映。
*心基部の虚血の反映。
との二つの解釈があります。
その気で見ないとaVRのST上昇は見落とします。(日頃見てない誘導ですから。)
数ミリのぱっとしないST上昇に留まっていることも多い。
以下、他のLMT-ACSの症例を提示します。
==LMTの血栓性塞栓を来した症例 No.2==
全誘導でST-T変化が生じている、不気味な心電図です。
aVRは、著明なST上昇を示しています。このように単純な説明が困難なショックの心電図はLMT病変を想起して下さい。
ER的診断は、下壁しか動いていない広範囲な壁運動障害を、心エコーで確認することです。
==LMT-ACS来した症例 No.3==
よくわかんない心室内変行伝導です。
P波もあるのか、ないのか。。
V2-5のT波増高も気になるけど、変な形です。
基線もぐらついて、四肢誘導は読みにくいのですが、
aVRのST上昇に気付くのがポイントです。
よく分からないショックは、12誘導心電図のaVRに着目しましょう。
蘇生直後のER記録の心電図です。体動が激しく基線が揺れています。RBBB様の心室内変行伝導です。
なんかaVRでST上昇が有りそう。
(こんな心電図は、さすがに設問に使えませんが)
挿管/人工呼吸器管理/PCPS/IABP作動状態で、心カテ中に記録した心電図です。
心内変行伝導の形が変化しました。
下壁誘導(II, III, aVF)と側壁(aVR)でのST低下があります。
aVRのST上昇が明らかです。
aVRのST上昇は、1.0mm以上で有意とします。
LMT-ACSの特徴は、
【aVRのST上昇のみが、LMT-ACSの所見のことがある】
【aVR以外の誘導が広範にST低下を示す例もある】
【1.0mm以上のST上昇で有意とする】
【そのつもりで見ないと、aVRの所見は見逃します】
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医事新報社からです。
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