80才代女性です。胸部不快発作で入院でした。
Discussion
*ACSとして、ERの時点ですぐに緊急心カテに入るべきでか?
2年前・(ERでの2回記録)の心電図を比較して見てみましょう。
胸部誘導の全体的ST上昇は、心外膜炎を感じさせますが、aVRのPR上昇はありませんね。2年前も、STはちょっと上昇してます。
* 僅かな心電図変化であるが、胸痛とセットなので緊急心カテを施行すべきである。
* まだ変化が明らかではない。中腰で経過を見るのは妥当である。但し、注意深い経過観察が必要である。
* ER搬入後の心電図・心筋生化学チェック。1時間、3時間後、6時間、24時間後の経時変化を追う。24時間後の心エコー・トレッドミル・負荷心筋シンチでの評価を加え、陰性ならば退院と外来管理(又は紹介)とする。
* 結局は、上記を全て踏まえての綜合臨床判断である。今回は急がず経過観察を選択しよう。(今回の選択です)
その気になって見ると、13:26の心電図ではII,aVF誘導でのT波平定化とIII誘導でのT波の陰転化はあります。しかし、有意と判定するかは、難しいですね。
ERでは帰す気にならなかった対応医により、入院経過観察となりました。
X+3dayで心カテ施行の方針となっておりましたが、X+2daysに再度の胸部不快が出現し、止まらなくなりました。
この時の心電図と採血結果です。
緊急のPCIとなっております。
RCA(#3)の完全閉塞です。
II, III, aVFのST上昇とaVLでのミラーイメージとしてのST低下があります。ST上昇は、III>II 誘導と思えます。房室ブロックは認められませんが。
(回旋枝病変は、後日追加のPCIを施行しております。)
なお、RCAへのPCIでのCPK/トロポニンのmax値は、X+2days
(18:53)でした。最小の心筋障害で済んだようです。
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虚血発作から救えた症例ではありますが、振り返りの考察を行います。(後医は名医的なんですけど。。)
結果として、すぐにPCIを行ってもよかった症例でした。Vf発作がなかっただけ幸運で、ERの時点ですぐに決断すべきとの批判もありそうです。
緊急カテの時点では、RCA #3は、severe stenosis without delayだった可能性もあります。酵素系はX+1dayでも動いておりません。RCA#3 or LCX#13どちらが責任病巣か、迷ったかもしれません。
また、この程度の心電図変化では、結果として冠動脈intactで終わることもあります。(こうなっても、ACSが除外されること自体は、悪くありません)
経験を積むほど、いろいろなシナリオが見えてきます。かえって、迷ってしまいます。分かんないから、ガイドラインに従うもありです。
最後に頼りになるのは、経験と知識と知性に裏付けられた直感かもしれません。
今回きっちと教訓を打ち出すのは、難しいですね。。