心房細動であることを除いても、なんかおかしな心電図だな。QRSとST-T変化が、普通じゃないよね、心エコーしとこう・・と思えたならば、心電図の役割は十分です。
まず、胸部レントゲンを心臓主体に見てみましょう。(肺野は、別の問題です。今回はスルーして下さい。)
クリックすると、拡大します。
- ◎ IV弓の突出が、最も目立つ所見です。
- ◎ III弓の突出はない。(僧帽弁疾患は考えにくい)
- ◎ 大動脈弓が小さめ。(心拍出量少ないか)
- ◎ 肺動脈の拡大無し。(肺高血圧の可能性少ない)
正面像だけで、全ての鑑別は難しいです。これを、念頭にも一回心電図を詳細に読んでみます。
クリックすると、ECGが拡大します。
★ 心房細動に異論は無い。
☆ やや左室の高電位。
★ 複雑なST-T変化を、主にV5,6で認める。
→下がって、上がって、又下がるややこしい波形。
☆ I, aVLと、側壁にも左室肥大としてのST-T変化を認める
★ II, III, aVFで、STの上昇を示す。上記のミラーイメージ??
☆ QRSに、notchやslurを認める。心筋障害を示唆する。
これらの所見をまとめて、左室が変!と思えたら、上出来です。
当然、心エコーで左室の状態を確認していきます。
心エコー図を、示します。
**左室長軸断層図**
とんでもない左室肥大が理解出来ます。
左室内腔が、僧帽弁の先端までしか、ありませんね。
僧帽弁と大動脈弁に、明らかな問題がありません。
**左室長軸断層図:心尖部より**
左室の内腔が、拡張期も殆どありません。
心尖部まで心肥大は、及んでいます。
心尖部肥大型心筋症と、思われます。
**左室短軸断層図**
短軸像で見ると、後下壁側はわずかに肥大を免れています。
Maron-III型の肥大ですね。
** 4 chambers view Color **
カラードプラ像です。
収縮期に、mid-ventoricular部分で、加速血流(モザイク)があり、HOCMとしての所見を理解出来ます。
もうひとつは、心尖部に拡張期の加速血流(モザイク)が確認されることです。左室中部の肥大は、拡張期も漏斗状となり、心尖部に高速血流を作っているようです。カラードプラですので、2m/sec.程度の血流でもモザイクを呈します。
** 2 chambers view Color **
上記所見が、さらに明瞭となります。
著明な左室肥大です。
なんとも説明し難い心肥大を呈する変な心電図=HCMで、だいたい当たります(←今回強気です)。
少なくとも、心エコーに進む動機付けとなります。
但し、HOCMか、Maronの何型か、までは分かりません。
【 変な左室肥大は、肥大型心筋症も疑いましょう!! 】
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