80才代の女性でした。
研修医Bさん:先生、調べてみました。
1.)びまん性の求心性左室肥大があり、高血圧・大動脈弁疾患がない。
2.)胸部誘導でQSpattern又はPRWPを呈し、低電位を示す。
この場合、心アミロイドーシスを強く示唆する。ですよね。
指導医T:ストライクだ。但し、strongly suspectedであって、あくまで臨床推定にまだ留まるんだ。
研修医Bさん:鑑別疾患は、
*肥大型心筋症
*Fabry病
*心サルコイドーシス
*急性心筋炎
(当然、高血圧心・大動脈弁狭窄もある)
などなど。
指導医T:心電図上の特徴は、
- ◎胸部誘導でのPRWP (or V1-3のQS pattern)
- ◎胸部誘導の低電位化
これが最も多いんだ。他に
◎軸偏位
◎HCM,ASで見られる左室高電位・ST-T変化が無い
が、ある意味大切な所見だよ。
研修医Bさん:心エコー(POCUS)で迫られる所見は?
指導医T:確定診断にはならないんだけれど、
- ☆びまん性の左室肥大
☆心筋内斑状エコー輝度増強
(granular sparkling appearance)
☆これがM-modeで、心筋内多条並行エコーとなる。
さらに、
★心房中隔の肥厚(amyloid沈着)
★弁膜の肥厚(amyloid沈着)
★ASHがないこと。(HCMとの違い)
★大動脈弁の開放が正常(ASがない)
もある。
ドプラ関連でも、いろんな所見あるけど、これは超音波の医師・技師さん達におまかせだよ。(POCUSの域を超えてます)
研修医Bさん:他に有用な検査は?
指導医T:ご多分にもれずMRIが有用らしい。ピロリン酸心筋シンチが左室全体で陽性になるのもある。
研修医Bさん:じゃ、それらが揃ってしっかりした考察が出来れば、症例発表ですね。
指導医T:それくらいは出来ると思うけど、病理学的確定(=心筋生検・剖検)がないと、査読者から突っ込まれることもあるようです。この症例は、予後改善を望む年齢ではないので、ほどほどで終わったんだ。
あと、アミロイドーシスの基本はちゃんと学んでいてね。
http://amyloidosissupport.org/AmyloidAware_Japanese.pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/shinzo/48/4/48_428/_pdf/-char/ja
web心電図問題でも例題あるよ。
http://www.mochida.co.jp/dis/guidance/electrocardiogram/q64.html
【低電位の前壁中隔梗塞様で、心エコー上の著明な心肥大は、心アミロイドーシスを積極的に疑う】
P.S.
研修医Bさん:これ、心電図検定試験に出ますかね?
指導医T:検定試験は、(心電図のみ)勝負なので、設問には馴染まないよね。でもボクが作るなら、PRWP症例を提示して、誤りはどれかの問題で引っかけるのはありかな。。
研修医Bさん:先生、なかなかいじわる(腹黒い)ですね。。