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Cardio2012のECGブログ-2019改

=上級医がやっている危ない心電図の見分け方= ECGにまつわる基本的な諸問題:総合診療部研修医と、ECG苦手医師のためのサイトです。

ECG-285:answer

   70才代男性です。 転倒・打撲での、搬入でした。頻呼吸・酸素化不良もあり、肺炎としての加療も考えましたが、

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◎ 気になる冷汗、滝のような発汗。

◎ 酸素化の悪化。Sickな見た目。

 トロポニン値の経時的上昇。

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  循環器科医師の Callとなりました。

  緊急の冠動脈造影に入りました。

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クリックすると、拡大します。

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  LMT病変でした。small-RCAであり、左室はLAD/LCXで、ほぼ全て潅流されています。LMTのatheromaの破綻ですね。

  緊急のPCIで、KBT等を行い、大変でしたが血行再建に成功しました。

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クリックすると、拡大します。

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 その後のCPK / トロポニン-I 値の変動をお示しします。

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 さて、ここは心電図のブログです。心電図を論じます。

心電図は、LMT病変だよ!大変だよ!と、アラームを鳴らしてくれたのでしょうか?

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 安定期、ERでの2回の心電図記録、PCI2日後の経時的心電図変化を示します。

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クリックすると、ECGが拡大します。

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  どうでしょうか?

  あなたは、アラームを感じ取れたでしょうか。

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  aVRとV4-6での心電図変化を、安定期とER搬入時で、拡大比較してみます。

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クリックすると、ECGが拡大します。

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変化してますね。

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aVRでのST上昇と、V4-6でのST低下があります。ほんの少しだけですが。

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これを、有意と感じ取れるか、どうかです。

午前4時に、一人で判断出来れば、たいしたもんです。

当院の研修医は、これよりも患者の自覚症状とトロポニンーI値の上昇の方が、循環器医をコールを決心させた理由でした。

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  正直、LMT病変の典型例ではないと思います。

  LMT病変ならば、全誘導でのST低下など、もっと派手に12誘導心電図が破綻して欲しい。。(アラームが、ガンガン鳴り響かない)

  このような、弱めの心電図変化でも、LMT病変があり得ることが、今回の教訓です。 

  なお、いろんなLMT病変でのaVR心電図変化を見ると、ST上昇がド派手な症例は、そんなにありません。この程度の症例も多いんです。見過ごされる理由です。

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  この弱い変化の理由はなんでしょうか?

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   二つの推論が、私の中にあります。

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1.)  LMT病変ですが、血流遅延はありません。搬入時のCPK,トロポニン-I 値の上昇無し。心電図変化が派手に起きるほどの病態では無かった。

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2.)  右冠動脈は、small-RCAで、ほとんど左心室を栄養していない。LADとLCXで左心室は支配されている。LMT病変で、左心室の全域での虚血発作が生じ、全ての誘導でキャンセルが生じて、一見変化が生じなかった。

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  ER心エコーでの左室壁運動障害は、軽度でした。

  よって、 1.) の方が、正しそうです。

 〔大阪の同士にも、確認・教えを請いました。感謝〕

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  LMT病変で、aVRのST上昇が著明なほど、予後が悪いようです。

  LMT病変なのに、aVRのST上昇がない場合、 2.)のように左室全虚血だと、もう殆ど壁運動が無いハイリスク症例となります。

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 【 ACSと思ったら、aVRのST-T変化を、意識的に判定しましょう 】

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