ECG-292:answer
70才代 男性の呼吸苦です。
心電図を見て、「何か変だな??」と思う感性を、大切にして下さい。
それこそが、心電図の役目です。
私(ECG)の訴えを、ちゃんと聞いて下さいな。
それを、読み解いてあげましょう。
何が変なのか、言語化しましょう。言語化=病態の理解が出来ないと、診断・治療までは、繋げません。
70才代男性で、呼吸苦の患者さん。これだけの情報で、まず解析してみました。
クリックすると、ECGが拡大します。
1.) 一番変なのは、広範なST-T変化。
2.) いわゆるstrain-patternを呈している。
3.) その分布は、V1-5と、II,III,aVFとなる。
この時点で、単純な左室肥大で説明困難と考える。
4.) P波においては、pulmonary-P様である。
5.) I 誘導では、R=Sで、右軸偏位となる。
6.) いわゆる移行帯は、V5である。
これらを、総合して考えると、右心系の負担・拡大が、強く示唆される。
7.) 右脚ブロック様パターンである。
しかし、V6のS波は深いが狭く、RVHの反映とも読み取れる。
総合所見:なんらかの肺高血圧・右心負荷所見。とにかく心エコー施行へ。
(心室の短軸像)
(4 chamber view)
さらに、胸部CT所見を添付します。
クリックすると、拡大します。
左心系が、癒着により、後方に回っているのが、よく理解出来ますね。
この方は、荒蕪肺化しており、下肺野は蜂窩肺となっています。
右室の拡大は、心エコー上明らかですね。
肺傷害による、二次性の肺高血圧・右心負荷です。
V7-9まで記録しました。
V6-9は、R>S波であり、左室の起電力を記録しております。
なお、R=Sとなる移行帯の直下に、心室中隔があるとは、単純に思わない方がよいようです。あくまで、傾向程度に捉えて下さい。
【 右心負荷による心電図変化がある、と云うことを知っておく 】
【 右心系の障害は心電図に、けっこう素直に現れる 】
なお、通常は臨床所見と併せて心電図の判読をすればいいんです。心電図だけから、深読みする習慣は、お勧めしません。念のため。
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